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今季に賭けるベテラン、添田豪の見せたプライド。
~弟分、錦織の活躍に秘めた思い~ 

text by

秋山英宏

秋山英宏Hidehiro Akiyama

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photograph byAFLO

posted2015/02/20 10:00

遅咲きの添田だが、2012年に世界ランク47位に入るなど、日本テニス界を牽引し続けている。

遅咲きの添田だが、2012年に世界ランク47位に入るなど、日本テニス界を牽引し続けている。

 全豪オープンでは2回戦でフェルナンド・ベルダスコに3-6、2-6、6-7で敗れた。会見で添田豪は「最初から第3セットのようなプレーがしたかった」。どこかで聞いたセリフだと思ったので、意地が悪いなとは思いつつ、「('13年ウィンブルドンの)ガスケ戦でも同じ言葉があったが」と、まぜっかえした。添田は苦笑いして、それでも丁寧に言葉を選んで答えた。

「序盤にリズムが作れないのは――強い相手とやるときは自分からポイントを取りにいかなくてはいけないですし、まだまだその弱点、課題は克服できていないので。まだ下手だなという感じです」

 素直だな、彼らしいなと思いながらペンを走らせた。「彼がもっとアクの強い選手だったら……」という思いが頭の中を通り過ぎた。腹にイチモツ持った嫌なヤツほどテニスは強い――筆者の持論だが、添田はそういうタイプではない。プレーも万能型だが、その反面、ラファエル・ナダルのような強烈な個性には乏しい。このタイプにはありがちだが、相手の出方を見ながら受け身のプレーに終始してしまう嫌いもある。そうなったら、格上との対戦では自分のペースに引きずり込むのは難しい。

錦織について、お茶を濁した答えでなくスルーした。

 その好漢添田が、会見で質問を一つ、スルーした。「錦織の可能性をどう見るか」という質問だった。「それは僕が言っても……。アガシとかチャンとか、僕より全然すごい人が言っているから、そちらに聞いた方が間違いないと思います」。嫌味な感じではなく、添田は穏やかに質問をかわした。彼が以前、「圭に引っ張ってもらっているところもある」と話したのを覚えている。兄貴分の添田なら、そんな答え方でお茶を濁してもよかったはずだが、それもしなかった。プライドといったら大仰すぎるか。しかし、何かが彼の口をつぐませたのだ。

 同じ会見で添田は、今季は大会数をしぼり、ツアー大会にピークを持っていくと話している。「勝負の年」だという。

「上(ツアー)で勝負して、ダメだったらダメだし、やれると思ったらまだまだいけるわけだし」

 30歳のベテランが気持ちも新たに挑もうとしている。その舞台の上には、錦織もいる。ノーコメントに、彼の気持ちが透けて見えるような気がしてならない。

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