岩渕健輔、ラグビーW杯と東京五輪のためにBACK NUMBER

岩渕健輔が語る、代表GM5つの仕事。
「変えるのが難しいこと」を変える。

posted2015/02/11 10:30

 
岩渕健輔が語る、代表GM5つの仕事。「変えるのが難しいこと」を変える。<Number Web> photograph by Wataru Sato

36歳という若さで日本代表のGMに就任した岩渕健輔氏。海外でのプレー経験もあり、日本の風土に染まりきっていなかった彼だからこそ、多くの改革は成功したのかもしれない。

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岩渕健輔

岩渕健輔Kensuke Iwabuchi

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Wataru Sato

「ゼネラルマネージャー(GM)って何をやっている人なの?」

 仕事柄、私はよくこんな質問を受けます。「GM」というのは最近よくメディアなどで取り上げられる役職ですが、たしかに実態は意外と知られていません。

 一口で説明するなら、GMとは「チーム強化の方向性を決め、それを実現するために様々なプランの立案や調整、交渉などを行なう仕事」と表現できると思います。

 私たちは、W杯で優勝を目指せる存在になるという目標を掲げています。ピッチ上で試合をするのは選手たちですが、試合が始まる前の段階で、強豪国と同じ土俵に乗っていなければ、世界と伍していくことなどできません。

 その意味では、日本が世界で戦えるようになるための「環境」を作っていくことが、私の役割になります。現に2012年の1月にGMに就任した際、協会側から告げられたのも「15人制や7人制、男女の別を問わずに、とにかく日本代表を強くしなさい」という、簡潔にして実に重みのある言葉でした。

GMの仕事は、大きく分けて5つ。

 以降、私がやってきた仕事は大きく分けて5つあります。具体的には、(1)強化の方向性の策定、(2)コーチングスタッフの編成、(3)具体的な強化プランの立案、(4)将来を見据えた枠組み作り、そして(5)予算の編成でした。

 まず強化の方向性の策定=日本代表がどのようなラグビーを目指すべきかというテーマに関しては、いかに明確で説得力のあるビジョンを提示できるかどうかが肝になります。GMの仕事は、日本ラグビーの将来的な在り方を決めることにもつながっているからです。

 この方針に基づいて行なうのが、2番目の職務となるコーチングスタッフの編成です。そこには代表チームのヘッドコーチ(監督)の選出も含まれますが、今振り返ってみても、現在日本代表を率いているエディー・ジョーンズを起用できたのはとても幸運だったと思います。

 選手を世界一にするには、最初に世界一のコーチングスタッフを揃える必要があります。私は昔から彼の手腕を高く評価してきましたし、チームを世界のトップに導いた実績を持つ人間は、ラグビー界で一握りに限られるからです。

 ヘッドコーチの人選に並行して、アシスタントコーチ等も選んでいくことになりますが、この作業では優秀な人材を集めるのはもとより、エディー・ジョーンズと同じ方向を向いているスタッフを集めることがポイントになりました。

 エディー・ジョーンズはスタッフに対して、自分の指示したことを忠実に実行するだけでなく、高い指導力と強いリーダーシップを積極的に発揮することを求めます。そういう体制を組んでいかなければ、世界で勝てないということを彼ははっきり口にしてきました。

【次ページ】 GM就任以来、大きく増やした代表合宿の時間。

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エディー・ジョーンズ

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