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泥にまみれても汚れない哲学。
~崇高な『シメオネ超効果』~ 

text by

幅允孝

幅允孝Yoshitaka Haba

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photograph byRyo Suzuki

posted2014/10/10 10:00

泥にまみれても汚れない哲学。~崇高な『シメオネ超効果』~<Number Web> photograph by Ryo Suzuki

『シメオネ超効果 リーダーの言葉で今あるチームは強くなる』ディエゴ・シメオネ著 木村浩嗣訳 ソル・メディア 1600円+税

 1998年のW杯でベッカムを退場に追い込んだ狡猾さばかりが人の脳裏には焼きついているらしい。

 だが、本書を読めばディエゴ・シメオネは現役時代から苦闘する挑戦者であり、生まれながらのリーダーだと知るはずだ。

 その彼が監督となり、今はアトレティコ・マドリーのベンチに座る。素晴らしい戦績は皆の知るところだろう。本書では「困難な時期」を迎えていたチームがどのように生まれ変わったのかを「逆境の乗り越え方」や「リーダーの責任と役割」など、それぞれのテーマに区切りながら簡潔に力強く伝える。そして、そんなシメオネの声はサッカーファン以外にも届く教示となるに違いない。

戦うシメオネを象徴する「黒」のフィロソフィー。

 着任前までは全力で戦っていないように思われたアルダ・トゥランに「私のハートを捧げます」と言わせたシメオネ。ジエゴ・コスタが一流のストライカーとして覚醒した理由。なるほど、シメオネの哲学と意志は、言葉として伝わるだけでなく、行為として表れるよう、選手の中に染み込むのだ。聞こえのいい言葉ばかりが並ぶ自己啓発サッカー本が多いなか、本書が特別なのは、そんなシメオネの信条を現実に落とし込む力が作用しているからに違いない。

 いつも黒いジャケットに黒いシャツ、黒いネクタイを結んだ黒装束でチームを指揮するシメオネ。それはスマートさの象徴ではなく、監督業を「孤独」だと明言する彼の戦闘服。どんなに泥にまみれても汚(けが)れない彼の崇高なフィロソフィーは、予算規模では計れないサッカーの魅力と公平さを僕らに伝える。

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