SCORE CARDBACK NUMBER

高校野球のキーワードは、「工夫」と「分析」へ。
~夏の甲子園、勝利への新セオリー~ 

text by

小関順二

小関順二Junji Koseki

PROFILE

photograph byNIKKAN SPORTS

posted2014/09/05 10:00

敦賀気比戦では2ランを放った大阪桐蔭・峯本匠。18Uアジア選手権代表にも選出された。

敦賀気比戦では2ランを放った大阪桐蔭・峯本匠。18Uアジア選手権代表にも選出された。

 第96回夏の甲子園、その頂点に立ったのは大阪桐蔭だった。2年前の藤浪晋太郎(現阪神)のような絶対的エースが不在の投手陣は大会前から不安視されていたが、峯本匠、香月一也、正随優弥を中心とした打線の破壊力は大会屈指と前評判が高く、実際に決勝までの6試合で46点を取る凄まじさだった。

 危うい場面も多かったのはたしかだ。1回戦の開星戦は初回に4点を先制されてからの逆転、準々決勝の健大高崎戦は初回に1点を先制されてからの逆転、準決勝の敦賀気比戦は初回に5点取られてからの逆転、さらに決勝の三重戦は2回に2点取られてからの逆転と、全6試合中4試合が逆転による勝利だった。

 その中でも開星戦と敦賀気比戦は、初回の大量失点からの逆転で大阪桐蔭の強さがクローズアップされたが、この強さを精神面へのアプローチだけで理解しようとしても無理。実は敦賀気比戦では、相手投手・平沼翔太の投球フォームから投げる球種を読み解く“解読作戦”が行われていた。セットポジションのときの腕の位置で、ストレート、カットボール、落ちる系(チェンジアップ、カーブ)の3球種を解読していたのだ。大阪桐蔭各打者の迷いのないフルスイングの背後にこそ、勝利の要因は隠されていたと見るべきだろう。

三重を準優勝に導いたエース今井のハイテンポ投球。

 大会全体に目を向ければ、早いテンポで投げる投手が続出した。スピード、変化球、コントロールが打者を打ち取るハードな要素なら、タイミングをずらすためのハイテンポ投球や、話題となった東海大四・西嶋亮太の超スローボールなどはソフトな要素と言える。

 準優勝に輝いた三重の今井重太朗は捕手からボールを受け取ってから投げるまでの間隔が約3.4秒と短く、打者に自分の間合いで打席に立つことを許さなかった。準々決勝に進出した聖光学院の船迫大雅、16強に進出した富山商の森田駿哉しかりである。「工夫」と「分析」が今後の高校野球を読み解くためのキーワードになっていくことは想像に難くない。

 また、“プロ注”と言われるドラフト候補は少なかったが、社会人球界、大学球界で期待できる選手は多かった。スカウトには物足りない大会だったかもしれないが、総じて充実した大会だったと言えるだろう。

関連コラム

ページトップ