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「個」対「インテンシティ」のCL決勝。
サッカーの“正解”を巡る大一番に。 

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木崎伸也

木崎伸也Shinya Kizaki

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posted2014/05/22 10:30

「個」対「インテンシティ」のCL決勝。サッカーの“正解”を巡る大一番に。<Number Web> photograph by AFLO

3月2日のリーガでは、2-2で引き分けたレアルとアトレティコ。対照的なスタイルの両雄だが、ロナウドとジエゴ・コスタという絶対的エースを擁する点は共通している。

昨季の優勝監督、ハインケスが予想する展開とは。

 では「最強の個」と「最強のインテンシティ」が大舞台のファイナルで衝突したら、どんな試合になるのか。

 昨季のCL優勝監督、ハインケスの分析が参考になるだろう。1998年にレアルをCLの頂点に導いたこの老将は、ドイツのキッカー誌でこう語った。

「昨季の決勝のように、互いに守備を意識して試合に入るだろう。立ち上がりは戦術と規律の戦いだ。その後、予測不可能なことに対するアドリブと感情がピッチを支配するに違いない」

 昨年9月にレアルとアトレティコは対戦し、ジエゴ・コスタのゴールでアトレティコが勝利した。その試合でアトレティコはボールを失うと、両サイドバックのフアンフランとフィリペ・ルイスが、すぐにロナウドとベイルをマーク。さらに他の選手がカバーに入った。この助け合う献身性とアグレッシブさにハインケスは感嘆せずにはいられなかった。

オッズはレアル優位、しかしアトレティコも普通ではない。

 おそらく立ち上がりは、互いに睨み合う展開になるだろう。そうなると鍵になるのがビルドアップのやり方だ。

 クライフは「現代サッカーにおいては、DFラインでボールを回すべきではない」と主張する。

「ボールはバックラインではなく、なるべく前でキープする方がいい。なぜなら前線にボールがあれば、常にその背後に選手が残っているからだ。今季のCLでは、この本質をわかっていない人間が多いことが証明された。たとえばパリ・サンジェルマンは、チェルシーとの試合において、中盤でテンポをコントロールしようとした。だが、それは単に攻撃を遅らせるだけだった」

 この問題がより見られるのはレアルだ。クライフはこう続ける。

「レアルはドルトムントとの準決勝2ndレグで、大きな間違いを犯していた。バックラインでボールを回すチームは、常に死を宣言されているようなものだ」

 ブックメイカー大手『bwin』のオッズは、レアル1.91倍、引き分け3.50倍、アトレティコ3.80倍。圧倒的にレアルが有利と見られている。昨季バイエルンのリベリーとロッベンという「個」がドルトムントの「インテンシティ」を制したように、今回もロナウドらが凌駕すると見ているのだろう。

 だが、今回のアトレティコのインテンシティは普通ではない。クライフですら驚くほどの200%サッカーなのだ。逆境に陥るほど、底力を発揮するはずだ。

 勝つのは個か。それともインテンシティか。今後のサッカー界の「正解」に影響を与える死闘になる。

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