欧州CL通信BACK NUMBER
香川真司と堅守速攻の意外な相性。
マンUが世界王者バイエルンとドロー。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byMan Utd via Getty Images
posted2014/04/02 12:30
先制点をあげたビディッチの頭を撫でる香川。セカンドレグはバイエルンのホームだが、2選手(シュバインシュタイガー、ハビ・マルティネス)が出場停止となるので予断を許さない。
現在のユナイテッドからすれば、バイエルンは最高の相手だったのかもしれない。
国内リーグでは不振にあえぎ、課題となる守備陣の整備は進んでいない。そして、サッカーの質もともなわない。
優勝候補バイエルンを相手に、素晴らしいサッカーを見せようなどと考える余裕はなかった。となれば残された道は一つ、勝負に徹するだけだ。4月1日に行なわれたCL準々決勝1stレグ、ユナイテッドはホームゲームにもかかわらず、守備をかためて、徹底してカウンターを狙うことになった。
ディフェンスラインを下げ、すぐ前にバレンシア、フェライニ、キャリック、ギグスで構成される2つ目のラインを作る。その前に位置するトップ下のルーニーは守備を助けつつ、カウンターの起点になる。そして、最前線のウェルベックがフィニッシュを狙っていく。
対するバイエルンは、ちょうど1週間前にベルリンでリーグ優勝を決めたときと同じように、シュバインシュタイガー、ラーム、クロースがセンターに入った。
彼らは入れ替わるようにディフェンスラインに下がりながら攻撃を組み立てていく。前線にはセンターフォワードタイプのマンジュキッチをおかずにロッベン、ミュラー、リベリーの3人が中央でめまぐるしくポジションを変え、その外側でラフィーニャとアラバのサイドバックが高い位置をとる。
前半の支配率は73%、ホームのように戦ったバイエルン。
「選手の並びを示すフォーメーションなど電話番号みたいなものだ」
とグアルディオラ監督は常々語っているが、センターに先に挙げた3人を配すると、攻撃のときは3-4-3のようにもなる。ピッチ両サイドの高い位置に、1つずつレーンを増やすようなもの。その狙いも明確だ。相手の守備をひろげて、パスを回しながら、チャンスをうかがう。
しかしこの試合に限れば、その戦い方は必ずしも効果的ではなかった。
確かに、前半のボール支配率は73%を記録した。この試合の前までのバイエルンの1試合あたりの平均パス数は790本だったが、この試合では前半だけで541本のパスを出している。数字をみれば、まるでホームゲームのような戦い方だ。