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SP16位で笑顔を失った浅田真央。
滑走前、彼女に見えていたものとは。  

text by

松原孝臣

松原孝臣Takaomi Matsubara

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photograph byKaoru Watanabe/JMPA

posted2014/02/20 11:15

SP16位で笑顔を失った浅田真央。滑走前、彼女に見えていたものとは。 <Number Web> photograph by Kaoru Watanabe/JMPA

演技を終え、厳しい表情で唇をかむ浅田真央。シニア転向後に体験したことのない16位という順位。浅田に何が起こったのだろうか……。

鈴木は8位、村上は15位での折り返しとなった。

 あるいは、懸ける思いの大きさかもしれない。いずれにせよ、2度目だからこそ難しいということはあり得るのだ。

 浅田もそうだったとは断言はできない。ただ、おそらくは体調や仕上がりから来るものではなかったのではないか。事態を消化しきれないでいる浅田の様子にそう思えた。何にせよ今は、いたずらに断言することはできない。

 鈴木明子は最初のトリプルトウループ-トリプルトウループが決まらず8位。両足の小指を痛めていたという。

「今はだいぶよくなっていますけれど、練習が積めていなかったので、不安がありました」

 と、涙にくれた。

 15位での折り返しとなった村上佳菜子も涙を流した。

 滑り出しから、調子がよさそうに思えた。だが、トリプルフリップが1回転になる失敗。

「調子がよかったので、悔しいです。飛ぶ前にすごく考えてしまいました」

 と、ただ悔しさを見せた。

上位を占めたコストナー、ソトニコワ、ヨナ。

 万全な滑りを見せられなかった日本の3選手に対し、ショートを滑った選手の中で、もっとも強い印象を残したのは、カロリナ・コストナー(イタリア)だった。最初のコンビネーションジャンプを、団体戦のトリプルトウーループ-トリプルトウループからトリプルフリップとトリプルトウループに変更。これを成功させると、あとはただただ、観る者を魅了するばかりだった。

「(ジャンプの変更は)コーチにも言っていませんでした。選択を任せてくれたコーチに感謝しているし、できるというところを見せたかったんです」

 と笑ったコストナーは、こうも語った。

「私のためのスケートではなく、皆さんと共有したいと思っていました」

 5コンポーネンツでトップの評価を得るなどしての3位だったが、その順位以上に、コストナーの思いが成就した、会心の演技ではなかったか。

 2位には、地元ロシアのアデリナ・ソトニコワ。大きな期待を集めていたユリア・リプニツカヤ(ロシア)がジャンプのミスで5位にとどまったのと対照的に、注目度という点で高くなかったのが幸いだったかもしれない。思い切りのいい、ノーミスの演技に、思わずロシアの記者たちから拍手が湧き起こった。

 圧巻の演技を見せたコストナーらを抑えて首位に立ったのは、キム・ヨナ(韓国)。

【次ページ】 3人はそれぞれに気持ちを切り替え、フリーへ。

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