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<3度目の五輪で頂点を> 加藤条治 「金メダルへの“壮大な実験”」 

text by

矢内由美子

矢内由美子Yumiko Yanai

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photograph byTakuya Sugiyama

posted2014/01/28 06:15

<3度目の五輪で頂点を> 加藤条治 「金メダルへの“壮大な実験”」<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama
昨季のW杯では12戦中7レースで表彰台に立ち、
その実力を証明してきた。3度目の五輪となる28歳は
世界の頂点に立つために、いかなる策で挑むのか。
大胆かつ繊細な“アプローチ”に迫った――。

開幕まで僅かとなったソチ五輪。
今回はNumber844号に掲載した加藤条治選手の記事を全文公開します。

 初めて世界の舞台を踏んだのは、まだ17歳のときだった。

 2002年12月。当時、高校3年生だった加藤条治(日本電産サンキョー)は、長野で行なわれたワールドカップでエース清水宏保の2位に続く3位に入って周囲を驚かせると、翌週のワールドカップ・ハルピン大会では3位の清水を上回る2位になり、「天才少年」と注目を浴びた。

 思えば、衝撃のデビューから11年もの月日が流れている。

 ソチ五輪を2カ月後に控えた12月、加藤を世界デビューの場でもあった長野のエムウェーブに訪ねた。待ち受けていたのは、いつもと変わらぬ、人なつこい笑みだった。

「ここまでは、大まかに言うと、予定通りに来ています。今のところまだ“爆発力”が出ていないので、それは少し気になっていますけど」

オフ明けの陸上トレーニングは基本的に一人でこなした。

 '13年11月15日のワールドカップ・ソルトレイクシティ大会の優勝で、ソチ五輪代表に内定したことが表情を和らげているのだろう。

 けれども、それだけではない。今の加藤には、6位だった'06年トリノ五輪、銅メダルを獲得した'10年バンクーバー五輪の経験がある。'05年には世界記録も樹立し、「初めてワールドカップの表彰台に上がってから今までずっと、表彰台に上がらなかったシーズンはない」というプライドもある。一方で、原因不明の足首痛に苦しむといった、糧となる経験も持っている。

 酸いも甘いも噛み分ける28歳は、ソチ五輪で金メダルを獲得するためには何が必要であると考えているのか。頂点に立つために、どのようなアプローチをしてきたのか。

――オフ明けの陸上トレーニングではどのような練習をしてきましたか。

「5月くらいに暖かい沖縄で体作りを開始して、その後は諏訪市や長野市など、各地を転々としました。メニューは朝起きたときに、その日にやりたいことを決めてました。山形中央高校の後輩がパートナーとして付いてくれていますが、練習は一人。基本的には個人合宿です」

【次ページ】 昨季から心・技・体の持っていき方を掴みつつあった。

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