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究極の異文化・大相撲で、
大砂嵐が目指すもの。
~エジプト人力士に大鵬イズムを~ 

text by

佐藤祥子

佐藤祥子Shoko Sato

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photograph byKYODO

posted2013/11/15 06:00

究極の異文化・大相撲で、大砂嵐が目指すもの。~エジプト人力士に大鵬イズムを~<Number Web> photograph by KYODO

祖国エジプトで開かれた講演会に出席した大砂嵐。「アラブに相撲を広めたい」と語った。

 1年納めの大相撲九州場所。エジプト出身力士の大砂嵐が、外国人最速記録の新入幕力士として、その土俵を沸かせている。新十両で迎えた7月の名古屋場所は、信仰するイスラム教のラマダンの時期と重なり、断食しながらも10勝を挙げた。翌9月場所でも10勝し、たった2場所での十両通過。その記者会見では、「早すぎる。もうちょっとゆっくりでもよかった」と、緊張した面持ちで、思わず本音を漏らした。

 モンゴル勢に限らず、大関琴欧洲、引退した元大関把瑠都をはじめ、外国人力士たちの出世は、おしなべて早い。その裏でいつも懸念されるのは、究極の異文化である大相撲への「理解度」だ。

 大砂嵐は、来日3年目。日本語もまだまだ拙いなか、所属する大嶽部屋が一丸となり、教え育て、護る日々だ。師匠である元十両・大竜の指導に、日に日に熱が籠もる。稽古場には、連日大砂嵐に向けて、容赦ない怒鳴り声が響き渡るのだ。

「こっちの言ってることがどこまで理解できてるのか。とにかく根気よく、同じことを言い続けてわからせるしかない」

屈託なく、大きな眼に力を込めて「絶対に横綱になる」。

 そう師匠は苦笑する。同部屋には、元幕下筆頭の世話人「友鵬」なる強力な助っ人も。ともに大横綱大鵬の愛弟子で、「大鵬イズム」を叩き込まれて来たふたりだ。相撲界でいう「ちゃんこの染みついた大兄弟子」の友鵬がいう。

「着物の着方ひとつ、付け人に対する配慮の仕方……。教えることは山ほどあるよ。時に英単語を交えてね(笑)。でも大砂嵐は素直だし、なにより相撲を愛する、その心があるから」

 新十両昇進も幕内昇進も、大砂嵐が真っ先に報告に行ったのは、今年1月に逝去し、位牌となった大鵬の元だった。

 クレバーな大砂嵐は、「今の自分の相撲はパワーが80パーセント。それでは幕内で勝てナイ」と自覚している。

 その一方で、屈託なく、大きな眼に力を込めて、「絶対に横綱になる」とストレートに口にするのだ。

 関取となってはじめて与えられたその専用個室に、2冊の本があった。1冊は大砂嵐曰く、「これはイラストだからわかりやすいヨ」との『平成大相撲決まり手大事典』。もう1冊の英書の背表紙には、『Gaijin Yokozuna』との文字が書かれていた。

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