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日本サッカー界に新たな黒船到来か?
清水のゴトビ新監督が起こす革命。 

text by

田邊雅之

田邊雅之Masayuki Tanabe

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photograph byGetty Images

posted2010/12/21 10:30

日本サッカー界に新たな黒船到来か?清水のゴトビ新監督が起こす革命。<Number Web> photograph by Getty Images

名門大学UCLAで電子工学を学んだゴトビ監督。卒業後は少年サッカーの指導から始まり、後にアヤックス、ロサンゼルス・ギャラクシー、大宮アルディージャ、水原三星などのチームでも強化に携わってきた

中東との交流で日本サッカーはアジアの奥深さを知る。

 関連してゴトビ氏の監督就任は、画期的な人材交流の呼び水となる可能性もある。アメリカのサッカー関係者との交流が始まるだけでなく、中東出身のサッカー選手がJでプレーするような日もやがては訪れるかもしれない。サイモン・クーパー氏が近著『Why England Lose』において指摘しているように、ブラジル出身というブランドに目がくらみ、移籍市場で高い買い物をしてしまう例は世界中で後を絶たない。中東から優秀な選手を適正な値段で招くのは、合理的なクラブ運営とチーム強化に資するだけでなく、アジアの広さと奥深さを知るのにも役に立つ(近年、オイルマネーで潤う中東のクラブがJの外国人選手を強奪するケースが続発している。中東からの選手獲得は、格好のリベンジにもなる)。

 最後の見所は、アジアカップ終了後に着任するゴトビ氏が、エスパルスをどう変えていくかだ。もちろん、長谷川健太前監督の離任を惜しむ声や「清水東三羽烏」路線の継承(エスパルスのユースを率いる大榎克己監督の昇格)を心待ちにしていたファンも少なくないと思う。

 だが戦術分析のスペシャリストとしてのゴトビ氏の資質や、様々な代表チームやクラブチームの指揮に携わってきた経験は抗しがたい魅力を持っている。またバルセロナ流の攻撃サッカーの信奉者であり、オランダサッカーにも造詣が深い点などはエスパルスのサポーターにとって吉報だろう。

実は以前から日本のことをよく知っていたゴトビ氏。

 しかも、ゴトビ氏は日本サッカーの「一見さん」でもない。大宮アルディージャともテクニカルアドバイザーの契約を結んでいたことがあるし、韓国代表の分析スタッフをしていた頃には、Jリーグでプレーする韓国人選手の視察にも訪れていた。

 西洋には「新しい酒は新しい革袋に」という諺がある。“仕込み”から20年近く経ったJリーグはもはや新しい革袋ではないかもしれないが、これまで嗜んだことのない銘柄の酒を注いでみるのは、日本サッカー界のさらなる熟成と混合(ブレンディング)を図る意味でも決して悪い話ではないはずだ。

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