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プレミア勢の移籍で明暗を分けた、
「フットボール・ディレクター」の存在。 

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山中忍

山中忍Shinobu Yamanaka

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posted2013/09/10 10:30

プレミア勢の移籍で明暗を分けた、「フットボール・ディレクター」の存在。<Number Web> photograph by Getty Images

第3節アーセナルとのノースロンドンダービーで、ローマから獲得したばかりのエリック・ラメラに指示を出すビラスボアス監督。

 今夏の移籍市場に、合計約1000億円もの資金を投じたプレミアリーグ勢。大型予算を支える巨額の“TVマネー”が、上昇の一途を辿っていることを考えれば、移籍金支出のリーグ記録更新に驚くことはない。しかしながら、今夏の活発な補強は、興味深い1つの変化をもたらした。獲得候補を洗い出して移籍交渉を担当する、「フットボール・ディレクター(FD)」の存在が見直され始めたのである。

 イングランドでは、監督をチームを指導する「コーチ」ではなく、チームを総括する「マネージャー」と呼ぶのが一般的だ。チーム作りの全権を任される監督にすれば、10年ほど前に欧州大陸から輸入された「強化担当役員」のコンセプトは、自らの職域を脅かす悪しき経営概念。「ディレクター・オブ・フットボール」、「テクニカル・ディレクター」、「リクルート責任者」など役職名は様々でも、FDの採用が、監督と経営陣の間に確執を生み、チームに悪影響を及ぼすことも珍しくはなかった。

 ところがこの夏は、そのFDの有無がプレミア強豪で補強の成否を分けた。成功組の代表格はトッテナム。2年目のアンドレ・ビラスボアス監督は今年6月、「世界屈指の実力者が来てくれた」と、フランコ・バルディーニのFD就任を歓迎していた。そもそも、FDのポジション自体が、指揮官の希望によって設けられたものだった。

170億で、7名の即戦力を獲得したトッテナム。

 トッテナムは、FD採用に関するプレミアの先駆者だが、そのポジションは、前監督のハリー・レドナップが全権を条件に就任した5年前、一度消滅していた。しかし後任のビラスボアスは、指揮官として台頭したポルト時代にも、FDと共同体制による補強が奏功した経験を持つ。プロ選手としての経歴を持たない35歳の若手監督は、わずか1ポイント差の5位とはいえ、今季のCL出場権を逃していることもあり、実力ある新戦力を引き付けるには、説得力のある補強のプロが必要との考えを強めてもいただろう。

 レアル・マドリーなどでもFDを務めたバルディーニは、7月上旬に加入したパウリーニョを皮切りに、20チーム中最高の約170億円をかけて、7名の即戦力をチームにもたらした。単独で130億円超でレアルに売却したギャレス・ベイルの代役となれる新戦力はいないが、集団としての総合力は、ベイルのいた昨季以上とも言える。

【次ページ】 ベンゲルはトッテナムの積極策を非難するが……。

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