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イチローが偉業までの秒読み開始!
苦難の10年間に意外なデータを発見。 

text by

菊地慶剛

菊地慶剛Yoshitaka Kikuchi

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photograph byKYODO

posted2010/09/17 11:00

イチローが偉業までの秒読み開始!苦難の10年間に意外なデータを発見。<Number Web> photograph by KYODO

9月14日のレッドソックス戦では、松坂大輔からタイムリー2塁打を打ったイチロー

過去10年間、何度もスランプに陥りかけていたイチロー。

 前述の通り2009年以外は毎年2割台の月が存在するわけだが、2カ月以上記録している年も6シーズンある。その中で、2カ月連続して2割台を記録しているのが、2002年、2003年、2005年の3回あり、この3つのシーズンが見事にシーズン安打数のワースト3と一致している。つまり他の平均的な打者同様、打撃不振が長期にわたる“スランプ”に陥ってもおかしくないシーズンがイチローにもあったのである。ただ、イチローはシーズンをまたぐことなく短期間でその不振から脱することができているようなのだ。

 大抵の選手にとって一度陥ってしまったスランプから復活するのは並大抵のことではない。

 今シーズンの松井稼頭央と岩村明憲を見てもらえば分かるように、彼らは長引く打撃不振を理由に一方は解雇され、また一方はマイナーに送られた(その後、岩村は電撃的にオークランド・アスレチックスと契約。メジャーに復帰した)。

年齢や環境の変化で、年々打撃の調整は難しくなっていく。

 メジャーで出場機会が制限されていた松井稼の場合、マイナー契約でロッキーズ傘下のコロラドスプリングスに移籍してからも、マイナーの悪条件(施設の劣悪さなど)も重なって自分の打撃を取り戻すための試行錯誤の泥沼にはまってしまった。

 本人曰く、好調だった過去の打撃に戻すのではなく、年齢、体調を含めた現状の中でベストの打撃を追求している、ということだったのだが……。メジャー再昇格こそ果たせなかったものの、終盤は3割5分以上の打率を残し13試合連続安打で締めくくるほどまでに復活してきていた。マイナーの公式戦最終日に「一度崩れたものを元に戻すのは難しいですね」としみじみ話してくれた言葉が耳に残っている。

 また昨年からメキシコリーグで現役を続けている前楽天の吉岡雄二が、最近こんな話を聞かせてくれた。

「時には自分のイメージとは違うスイングでホームランが打てることもあります。でも僕の場合、次の打席でイメージ通りのスイングに修正するよう心がけています。そうしないと結局スイングに悪い癖が残ってしまい、そのままどんどん悪い方向に向かってしまうんです」

【次ページ】 全ての打撃理論が「イチロー」という言葉で終わる時。

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