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“代打事件”で全米騒然。
転換期を迎えたAロッド。
~メジャー19年目に味わった屈辱~ 

text by

四竈衛

四竈衛Mamoru Shikama

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photograph byYukihito Taguchi

posted2012/10/26 06:00

“代打事件”で全米騒然。転換期を迎えたAロッド。~メジャー19年目に味わった屈辱~<Number Web> photograph by Yukihito Taguchi

メジャー最高年俸3000万ドルのAロッド。今季は2割7分2厘、18本、57打点に終わった。

 その瞬間、ヤンキースタジアムがどよめいた。地区シリーズ「ヤンキース対オリオールズ」の第3戦。9回裏、1点差を追い掛けるヤンキースは、3番アレックス・ロドリゲスに代打を送った。そこまで不振続きで地元ファンからもブーイングを浴びせられていたとはいえ、現役最多の通算647本塁打を放ってきた看板選手。一歩間違えれば、今後の戦いだけでなく、チームが崩壊しかねない。ジョー・ジラルディ監督の大胆な采配は、大きなリスクと背中合わせだった。

「難しい決断だった。ただ、勝つためには何をすべきか。自分の思う通りにするべきだと、心が訴えていたんだ」

 結果は大正解だった。代打で登場したイバネスが同点ソロを放っただけでなく、延長12回裏にはサヨナラ本塁打をたたき込み、シリーズの流れを引き寄せた。だが、ニューヨークを始め全米のメディアは、一斉にこの「代打事件」に飛び付いた。ジラルディ監督とAロッドの関係悪化だけでなく、来季の契約破棄の可能性まで、論争のテーマに挙げられた。

 それらの雑音を封じ込めたのは、メジャー19年目で初めて代打を送られたAロッド自身だった。「おそらく高校時代以来」という屈辱にも、現実を冷静に受け止め、「個」を捨てる姿勢を強調した。

「今年ずっと言い続けてきたが、我々は25人で戦っているんだ。正直なところ、これが10年前に起こっていたら、どう反応していたかは分からないが、ここ数年で僕も大人になった。チームの勝利以上にすばらしいことはないよ」

2戦連続の代打、そしてスタメン落ち……立場に微妙な変化が。

 その一方で、1994年に19歳でデビューして以来、不動の主軸としてプレーしてきたAロッドの立場が少しずつ変化してきたことも否定できない。翌日の第4戦で1点を追う延長13回裏に代打を送られただけでなく、第5戦ではついに先発メンバーからも外れた。

 勝つために情を挟まない姿勢は、ヤンキースだけでなく昨今のメジャー全体に共通することだが、過去の実績にとらわれないジラルディ監督の采配は、時の流れを映し出しているかのようだった。

 今回の代打事件に発奮して、再び豪快な打撃を取り戻すのか、それともこのまま準レギュラーに甘んじながら晩年を過ごすのか。37歳の大砲が、ターニングポイントを迎えていることは間違いない。

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