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<日本ゴルフツアー選手権への道> 昨季王者・五十嵐雄二、激闘の記憶。 

text by

塩原義雄

塩原義雄Yoshio Shiobara

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photograph byTaku Miyamoto

posted2010/06/01 10:30

<日本ゴルフツアー選手権への道> 昨季王者・五十嵐雄二、激闘の記憶。<Number Web> photograph by Taku Miyamoto

「緊張せずにプレーできたのは、亨さん(鈴木)のおかげ」

「なんか、とんだ勘違いで、大喜びしてしまった自分が、ちょっと恥ずかしかったですね」

 お先に。タップインした。

「ナイスバーディー!」。また、鈴木が声をかけてくれた。

「最終日に緊張せずにプレーできたのは、亨さん(鈴木)のおかげでもありました。亨さんだって優勝を目指してラウンドしているはずなのに、経験不足の自分を引っ張ってくれているようで、本当にありがたかった」

 14番から再びパーセーブを重ねて迎えた17番パー4でピンチを迎えた。3メートルのパーパットを残していた。これまで、何人の選手が、同じライン、同じくらいの距離のパットをはずしてきたか。ギャラリーは、五十嵐のパーパットが決してやさしくないことを知っていた。

優勝争いの大事なパットで冷静にプレーできた秘密。

 グリーンサイドに速報板があった。五十嵐の名前が一番上にあった。I・J・ジャンと並ぶ首位に立っていたのだ。そのことに五十嵐自身は気づいていないようだった。速報板に視線を向けることもなかった。キャディーの榎本と二人でラインを確認し合う。アドレスは、すんなり決まった。あっけないほどあっさりとストローク開始。カップ真中から沈めた。最終日の優勝争いの大詰めで未勝利選手とは思えない、淡泊とさえいいたいようなパーセービングパットではあった。

 後で五十嵐が、その理由を明かしてくれた。

「実は、あのラインをわかっていたんです。どう読んでもストレートに見えるけど、実際はボール1個半分ぐらいフックするんですよ。なぜ知っていたのかというと、練習ラウンドのときに久保さんが同じラインでストロークして外したのを覚えていたんです。ええ、ストレートラインと読んで、カップ左にはずして口惜しがっていました。『切れるようには見えないけどなあ……』というつぶやきまで覚えていました」

最終18番ホールであっさりとパーセーブした五十嵐。

五十嵐雄二

 最終18番ホール。フェアウェイからの第2打を花道に運んだ。グリーンの左サイドに設置された速報板。五十嵐は、初めて首位タイであることを知った。ピンまで15メートル。パターを手にした。ボールは、2メートルもオーバーした。下りのスライスラインが残った。これも、あっさりとカップインさせることになる。

「あのときは、試合展開を考えていたんです。自分がはずして亨さんが決めたら逆転されるとか、自分が決めて最終組のジャンもパーセーブならプレーオフになる……とか。そのうちに、自分のパッティングの番になってしまって、いつもどおりのルーティンでストロークしたわけです。入れなければとか、外したくないとか考えていなかったことが、よかったのだと思います」

 スコアカードを提出してI・J・ジャンを待つ。そのジャンはパーセーブに失敗して五十嵐のツアー初優勝が決まった。5年間のシードも獲得した。

 今年は、ディフェンディングチャンピオンとして宍戸ヒルズの舞台に戻ってくる。そうそう。うっかり今年の書き初めにどんな文言を記したのか聞きもらしてしまったが、想像するに『連覇』ではなかっただろうか。

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