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注目すべきは“YU”だけじゃない!
チェンが見せるNPB仕込みの投球術。 

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菊地慶剛

菊地慶剛Yoshitaka Kikuchi

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photograph byGetty Images

posted2012/04/30 08:01

注目すべきは“YU”だけじゃない!チェンが見せるNPB仕込みの投球術。<Number Web> photograph by Getty Images

4月17日のホワイトソックス戦で初勝利を上げたオリオールズのチェン・ウェイン投手。続く、22日のエンゼルス戦でも6回1/3を投げ5安打1失点と好投し、自身に勝ちはつかなかったがチームの勝利に貢献した。

登板のたびに、投球内容を上向かせていったチェン。

 しかし、投球自体は申し分ない内容だった。

 6回途中まで投げ4失点。味方の失策にも足を引っ張られ、同点に追いつかれたところで降板したものの、自責点は2。最後までチームに勝つチャンスを与える投球を続けた。

 彼の初登板は、地元紙などで大々的に報じられたダルビッシュとは違い、投球そのものは評価されるも、主要な記事として紙面を飾ることはなかったのである。

 そんな周囲の反応とは裏腹に、チェンは登板の度に投球内容を上向かせてきた。

 チェン本人が「緊張しやすい」と公言しているように、デビュー戦は表情もつくれないほどガチガチに緊張していた。だが、3度目の登板となった4月22日のエンゼルス戦では、マウンド上で慌てた素振りは一切見られなかった。

直球のキレで勝負する、メジャーでも変わらぬ投球術。

 真っ直ぐの球速もデビュー戦では88~90マイル(142~145キロ)だったが、エンゼルス戦では90~92マイル(145~148キロ)に上がっていた。それだけ力まずに身体が使えるようになった証拠だろう。

 チェンの投球スタイルは、基本は真っ直ぐで攻め、そこにスライダー、カーブ、チェンジアップを織り交ぜる。

 ダルビッシュのように傍目から見ていても剛速球とわかったり(92マイルでも十分に速いのだが)、キレキレの変化球を投げるわけではないため、決して打者を圧倒するような投球ではない。

 客観的に見てこれといった絶対的な球種はないが、エンゼルス戦でも全投球の6割を真っ直ぐで攻め、アルバート・プホルス選手から高めの真っ直ぐで空振り三振を奪うなど、真っ直ぐのキレで勝負していくタイプである。

【次ページ】 “ほどほど”程度の注目がチェンにとって最高の環境!?

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