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デーモンの移籍に見る、
厳冬のストーブリーグ。
~辣腕代理人ボラスの窮地~ 

text by

津川晋一

津川晋一Shinichi Tsugawa

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photograph byYukihito Taguchi

posted2010/03/05 00:00

デーモンの移籍に見る、厳冬のストーブリーグ。~辣腕代理人ボラスの窮地~<Number Web> photograph by Yukihito Taguchi

 スプリングトレーニング開始直前、ヤンキースからFAとなっていたJ・デーモン外野手が、デトロイト・タイガースと1年800万ドル(約7億3000万円)の契約で合意に達した。このデーモン契約までの一連の過程は、今冬のストーブリーグを象徴するような出来事だった。

「複数の選択肢があるけど、ヤンキースに戻って連覇を目指したい」と残留の意向を示したデーモン。昨季、打率2割8分2厘、107得点、自己最多タイの 24本塁打という数字を残し、プレーオフでも世界一に導いた功労者に対し、チームも慰留する方針だったが、金銭面が大きな隔たりとなった。複数年契約こそ一致したが、昨季並みの年俸を辣腕代理人のボラスが譲らず決裂。その強硬な態度に移籍先が見つからず、一時は引退の噂すら囁かれた。2月に入りボラスは、デトロイトの地元紙に「加入すればチームに勝利をもたらす自信がある」というデーモンのコメントとともに、本拠地との相性の良さもアピールして売り込み攻勢。ようやく契約にこぎつけた形だ。

 契約成立に際し、全米メディアは「お得な見積もり」「過小評価」などと書き、買い手主導となった状況を論じた。なにしろ2月直前になっても、所属先が決まらない選手が150人以上という異常事態。経済の冷え込みが恒常化し、各球団とも補強費を抑える傾向となっている。結果、有望な若手中心の編成がトレンドとなり、高額な大物プレーヤーが割を食う。現在のマーケットになんとか順応したデーモンは、契約にこぎつけられただけ良かったのかもしれない。

移籍先が決まらず引退に追いこまれる選手も。

 同じくボラスのクライアントであるJ・ウォッシュバーン(前タイガース)は行き先が見つからず引退を検討しているとも言われ、昨季、自己最高打率を記録したF・ロペス(前ブリュワーズ)は業を煮やして同代理人との契約を解除した。

 ファンがストーブを囲み選手の行き先を談義したことから“HOT STOVE LEAGUE”と呼ばれるオフシーズン。しかし今年は特に、“ICY STORM(氷の嵐) LEAGUE”と表現される。「マーケットがこんな風になるなんて誰も予想できなかった。今は本当にタフな時期なんだ」。チームに合流したデーモンのこの嘆きが、現状を雄弁に物語っていた。

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