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リバプールが支払った27億円は妥当?
ダウニングの「プレミアム」の値打ち。 

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山中忍

山中忍Shinobu Yamanaka

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posted2011/07/24 08:00

リバプールが支払った27億円は妥当?ダウニングの「プレミアム」の値打ち。<Number Web> photograph by AFLO

19歳で代表デビュー、イングランドの左サイドを担うと言われたダウニングも今年で27歳。キャリア初のビッグクラブで持ち前の突破力を発揮することができるか

ダウニングに付きまとう「マクラーレンの影」。

 にもかかわらず、新ウィンガーの獲得に対するリバプール・ファンの反応が鈍かった背景には、ダウニングを巡る2つの不運があると思われる。

 1つは、2005年の代表合宿中に負った怪我で、国際舞台でブレークする機会を逃してしまったこと。翌年まで戦線に復帰できなかったダウニングは、左サイドハーフが本職ではないジョー・コール(現リバプール)の控えとして'06年W杯を過ごすはめになった。

 もう1つは、プレミアで弱小扱いされるミドルズブラのイメージ、更に言えば、当時の監督だったスティーブ・マクラーレンの影が付きまとってしまうことだ。

 ミドルズブラでのUEFAカップ(現ヨーロッパリーグ)決勝進出という実績のみで、'06年にパートタイムの代表助監督からフルタイムの代表正監督に昇格したマクラーレンは、イングランドの指揮官として大失態を演じた。EURO2008予選敗退が決まったクロアチア戦で、雨に打たれながら指示を送り続ける相手監督の横で、傘を差して傍観していたその姿は、不甲斐なさの象徴として国民の脳裏に焼きついている。

 史上最悪の代表監督と言われてイングランドを去ったマクラーレンは、後にオランダでリーグ優勝を果たした昨年5月にも、ノッティンガム・フォレスト(2部)の監督として帰国が決まった今年6月にも、ニュースを告げる国内紙で「傘」姿の写真を掲載された。ダウニングは、そのマクラーレンの秘蔵っ子と認識されているのだ。

「リバプール復活の立役者」との新イメージを確立できるか?

 今回のリバプール移籍は、ダウニングが「ミドルズブラ時代のマクラーレンの選手」というイメージを払拭する絶好の機会になる。前回のアストンビラでも、マーティン・オニールという人気監督の下でイメージチェンジが可能かに思われたが、移籍1年後にオニールが辞任し、チームとしても中位止まりでブレークには至らなかった。

 だが、新天地にはケニー・ダルグリッシュという、オニール以上のカリスマを誇る監督がいる。リバプールのファンが「キング」と崇める指揮官の要請に応えて、CL出場圏(トップ4)返り咲きの力となれば、ダウニングには、リバプール復活の立役者の1人という新たなイメージが生まれる。実際、「キング」の御所望なのだからと、移籍金の高さには目を瞑るサポーターもいるようだ。

【次ページ】 キャロルとのホットラインがリバプールを優勝戦線に!

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