「ミスした分、点を取るから許して」（澤）

　実際、スウェーデンがさほどボールを取りに出てくるわけではなかったため、ボールをまわしてリズムを作ることそのものは難しい作業ではなかった。さらに、ここまでの試合で培った精神的な余裕もあった。

　19分、中盤でボールをもった大野がドリブルで運ぶと、左サイドへ開く。走り込んだ宮間は左足ダイレクトでクロスを供給すると、大外にとびこんだ川澄が右足のすねで押し込んでまずは同点とする。

　前半を1－1で折り返したハーフタイム。澤がチームメイトの前で、失点のミスを謝罪した。

「ミスした分、点を取るから許して」

　後半開始。60分にはヘディングの逆転弾で主将は自らの言葉を現実のものとしていた。

　続く64分には、前線に飛び出ようとした安藤に反応し前に出て来たGKをあざ笑うかのような川澄のミドルシュートが決まり3－1。

貫禄さえ感じさせてくれた、なでしこジャパンの圧勝。

　もはや、スウェーデンに反撃の余力はなかった。

　中3日でこの試合に臨んだなでしこは、前戦のドイツ戦で延長戦を戦っていたとはいえ、中2日のスウェーデンとの疲労の差は歴然としていた。なでしこはそのまま試合の主導権をゆずることなく、メダル獲得確定という歴史的な瞬間を迎えた。

「良い試合だった!!!」

　澤は、心の底から溢れ出る喜びの声を抑えなかった。

　ただ、全体的な歓喜の度合いは、準々決勝ドイツ戦のほうが明らかに大きかった。

「ドイツ戦はギリギリまで耐えて耐えて、やっと1点をとって、終わってくれという感じだった。今日は展開の中で勝利が見えていた」（岩清水）

　もはや貫禄さえ感じられる、なでしこたちのたたずまいだった。

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