プロならサインをするのが「当たり前」なのだろうか。
当たり前だと思っていたからこそ、石川遼は腹を立てた。アメリカの地で怒っていた。
「実際にあれが違うことに使われてるのを僕は知っている。写真がオークションに出回ってたりするのをインターネットで見て、すごくショックでしたし、日本ではあまり聞いたこともないのでびっくりしました」
米国のオークションサイトを見れば、石川のサイン入り写真やボール、ピンフラッグなどが多数出品されている。そのどれもが、米国でも少しでもファンを増やしたい、米国のファンにも早く名前を覚えてもらいたい、と純粋な気持ちを込めてサインしたものだ。それがなんの敬意もなく、金もうけの道具として転売されている。
サインが転売されるのもスター選手の証ではあるが……。
2月の米ツアー遠征でも、ある大会の練習日からサインをねだる男性3人組につきまとわれた。最初の1つにはサインした石川だったが、その後は執拗にサインを求められても素知らぬ顔で通り過ぎた。「サインをもらったら額に入れて飾りたいんだ」とうそぶくいかがわしい3人組。石川は彼らの言い分を鼻で笑い、口をとがらせてこちらにこう言った。
「僕はあの人の顔を1年前に来た時から知ってますよ」
昨年の米国遠征時にもさまざまな人にサインを求められ、石川は喜んで応じていた。最初の頃は気づかずにいたが、次第に普通のファンとは違う人物がいることが分かってきたのである。
「サインする人を選ぶっていうのは考えられないことだった。求められればサインをするのがプロとして当たり前のことだと思ってたけど、どうもそうじゃないみたいなんで……」
サインを欲しがる人を顔で判断するわけにもいかないので、「1人にひとつ」と自分の中でのルールを定めた。それは転売をしようとする人物に対しても同じで、1つまではオーケーと決めている。
防衛策はたかが知れているし、それが本当のファンの接触を阻むことになっては本末転倒。プロである以上、ある程度のことには目をつむってファンサービスに努めるべきだとも思う。怪しい輩に言い寄られるのも選手としての価値があるからこそ、高値で売れれば箔がつく。プロならそこまで割り切ってしまってもいいのかもしれないが、そこを割り切れないのが石川のキャラクターであり、純粋さである。
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筆者プロフィール
雨宮圭吾
1979年生まれ。東京都出身。上智大学文学部を卒業後、スポーツニッポン新聞社に入社。プロレス・格闘技、相撲を経て、現在はゴルフを担当。国内に海外に出張続きの日々を送っている。相撲記者時代に偶然行ったゴルフの取材で中学2年生の石川遼と出会う。縁もゆかりもなかったゴルフだが、今では石川を取材するのと同じぐらい自分のプレーにも情熱を傾けている。































