オシムジャパン試合レビューBACK NUMBER

アジアカップ VS.ベトナム 

text by

木ノ原句望

木ノ原句望Kumi Kinohara

PROFILE

photograph byTakuya Sugiyama

posted2007/07/19 00:00

アジアカップ VS.ベトナム<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

 「ベトナムの戦術がどんなものか、選手たちがすぐに理解してくれたので、早く立ち直ることができた。」

 日本がベトナムに4−1で勝利し、アジアカップ準々決勝進出を決めた7月16日のグループリーグ最終戦後の会見で、オシム日本代表監督はこう話した。

 1年前の就任以来「考えて走る(動く)」ことを選手に常に求めてきた指揮官は、選手を褒めることはほとんどなかった。その66歳の監督が、大会の節目となる試合で口にした台詞は、選手の成長ぶりを認めるものだ。

 ベトナムを得失点差で上回る日本は、この試合に勝てばB組1位通過が決まるが、引分けになると、カタール対UAEの次第では2位通過や抽選というややこしい状況になる。

 だが、4万人の観客の後押しを受けて果敢に動きまわり攻撃をしかけるベトナムに、日本は試合早々に振り回される。立ち上がり、どこか試合に入りきれないまま、前半7分に左CKがMF鈴木に当たって先制を許してしまった。

 しかし、日本は慌てることなくその5分後にMF中村俊輔の左からのクロスにFW巻がファーサイドから飛び込み、胸で同点弾を押し込む。31分には、FW高原がペナルティボックスのライン上で倒されて得たFKを、MF遠藤が直接ゴールに叩き込んで2−1に。ミーディンスタジアムを埋めた熱狂的な地元ベトナムファンを黙らせてしまった。

 「ラッキーとは言いたくないが、早い時間で追いついたのはよかった。踏みとどまることができた」とオシム監督。

 「こういう試合はいつ、いかなる状況が起きても対応していかなければいけない」と臨機応変に試合状況に対応できる能力を身につけることを求めている監督は、相手とどう戦うか、直面している現状にどう対応するかを「選手が自分たちで判断した」(オシム監督)ことが、なによりもうれしい部分だったようだ。

 中村俊輔は、「ゆっくり回しているよりは、早く勝負へ行くために前へ動き出していったのが良かった。監督は仕掛けろとは言わなかったが、自分たち、特に僕がそう思った」と話した。

 また、鈴木も、「今のチームは、失点しても経験ある選手たちが慌てない雰囲気を作ってくれる。ベトナム戦はこれからの戦いのヒントになる」と言った。

 だが一方で、グループリーグ3戦すべてで失点をし、特に試合の入り方には不安が残る。

 DF加地は、「試合ごとに1失点しているので、まずはその修正。攻撃のバリエーションや確認も必要。そしてミスを減らすこと」と課題を指摘した。確かに、決勝トーナメントの試合では1つのミスが命取りになる。

 しかも、これまでの対戦相手と違って、次にあたるオーストラリア。パワーと体格で優位に立つ彼らに先制点を許せば、試合の展開は当然苦しくなる。

 昨年6月のワールドカップで3−1の逆転負けを喫した相手は、「当時と比べるとディフェンスに難がある」(某オーストラリア人記者)らしいが、ビドゥカ、キューウェル、ケーヒルら、危険な攻撃陣は健在だ。これまでの対戦相手とはタイプもレベルも違う。

 5大会連続で決勝トーナメントに進出して3連覇を狙う日本が、因縁の相手にどう戦うか。周囲の期待と注目は上がる一方だ。

 この状況にオシム監督は、「前回優勝者として勝たなければいけないというプレッシャーがあり、ミスや取りこぼしは許されないという雰囲気がある。日本はブラジルではない」と釘をさすことを忘れていない。周囲、特にマスコミの加熱報道が、ようやく形になってきたチームのパフォーマンスにマイナス影響を与えるのを危惧しているのは明らかだろう。

 だが、「同じ相手に続けて負けるのはまずい」と選手が異口同音に話す対戦で、成長を見せ始めたチームが勝利を手にすれば、彼らにとってはさらに大きな進歩になる。

 GK川口は、「日本は当時と選手も監督も違う。チームとして個人として前進している。どういう戦いができるか」と話した。

 日本の成長を確かめるのには、いい対戦に違いない。

ページトップ