18歳で出場した長野五輪から12年。女子モーグルで7位、6位、5位と五輪ごとに1つずつ順位を上げてきた上村愛子が、4回目のバンクーバーで狙うのはズバリ「金」である。
トリノ五輪からの4年間で着実に力をつけてきた彼女だが、その実力を五輪の舞台で存分に披露するには自らの滑りに合った用具のサポートが欠かせない。
そんな上村が信頼できる“相棒”として選んだのが日本製の用具たち。選手はもちろん、スキーもブーツも日本製という“オール・メイド・イン・ジャパン”の快挙を目指す。 オフィスビルが建ち並ぶ大阪・西区の一角に、上村愛子が愛用するスキーブーツのメーカー『REXXAM(レクザム)』はある。無機質なビルの外観や内装は、職人気質を感じさせる町工場そのものだ。
ブーツづくりで30年余りのキャリアを持つスポーツ事業部長の林末義が、上村愛子と出会ったのは2001年ゴールデンウィークのことだ。同じ大阪を拠点にスキービジネスを展開するマテリアルスポーツの藤本誠から「上村がブーツのことで悩んでいる」と聞き、「一度、ウチのブーツを履かせてみませんか」と言ったのが始まりだった。
当時の上村は外反母趾を患っており、スポーツ新聞に「外反母趾で引退?」と書かれるほどのひどい痛みに苦しんでいた。さっそく合宿先のカナダに足を運んでじかに話を聞いてみると、「足首に合わせてブーツを選択するとつま先が細くて親指のつけ根が当たり、当たらないようにつま先の幅が広いブーツを選択すると足首がガバガバでどうしようもない」と途方に暮れていた。合宿でも痛み止めの注射を打ちながら練習しているような状態で、まさにブーツとの戦い。いくつものメーカーのブーツを履いて試してみたが、彼女を苦しみから救ってくれるブーツは1足もなかった。
レクザムのブーツで上村愛子が「金」を狙う条件は整った。
CADを使うことで、使う人の足の形に合わせてブーツの設計が出来るレクザムが手がけるブーツは主にアルペン競技用だが、その人の足に合った1足をつくるという点では、モーグル用でも基本的な考え方は変わらない。足の幅、シェルと呼ばれるブーツ外側のプラスチックの硬さ、インナーの種類を足の形や技術レベルに合わせて組み合わせていく方式なので、特別な工夫をすることなく上村の求めに応じることができた。
ブーツをテストした彼女は、「足首は締まるし、圧力を逃がしたい部分はちゃんと逃がしてくれる。これは使えます!」と手放しで喜んだ。
ようやくスキーヤーとして競技に集中できる環境が整ったのである。
<次ページに続く>
筆者プロフィール
茂木宏子
1962年生まれ。神奈川県出身。日本大学法学部新聞学科卒業後、編集制作会社を経てフリーライターに。週刊誌の記者として活動する一方、スキーブームのきっかけとなる「極楽スキー」(小学館)の編集にも携わった。取材のフィールドはスポーツに限らず、ビジネス、最先端テクノロジーなど多岐に渡る。 主な著書は「メダルなき勝者たち」(ダイヤモンド社)「お父さんの技術が日本を作った!」「夢をかなえるエンジニア」(いずれも小学館)。 第46回(97年)小学館児童出版文化賞受賞。中央大学商学部非常勤講師。































