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Vol.8 杉山祥子 探求は終わらない 

text by

宮崎恵理

宮崎恵理Eri Miyazaki

PROFILE

photograph byToshiya Kondo

posted2008/02/19 00:00

Vol.8 杉山祥子 探求は終わらない<Number Web> photograph by Toshiya Kondo

 杉山祥子は、探求心のプレーヤーである。木村沙織や高橋みゆきは、努力する一方で、最後の最後は試合中のカンでプレーする。真剣勝負が感覚を研ぎすまさせ、彼女たちのプレーに、“センス”という最後のスパイスを振りかけるのだ。

 杉山は、自分はカンでプレーするタイプじゃない、と言いきる。練習こそが自分を磨いていく全て。納得できるまで徹底的に練習を積んでいって初めて、自分はコートに立てるのだ、と。

 昨年、ワールドグランプリの予選ラウンド・東京大会で、杉山の姿はなかった。スタメンはおろかベンチに入る12人の登録メンバーにさえ名を連ねなかったのだ。何かが不調だったわけではない。しかし、センター陣の充実を図る柳本ジャパンの中で、熾烈なポジション争いが展開されていたのは事実だ。庄司夕起や荒木絵里香などの若手が活躍する姿を見ながら、あるいは、多治見麻子、先野久美子らベテランがベンチを固める中、杉山は自分のプレーを見つめ直していた。

 そんな時にも、杉山を支えていたのは、練習に没頭すること。スパイクやブロックの練習だけではない。得意ではないレシーブに、改めて取り組んだ。大阪・貝塚のトレーニングセンターに戻ると、先輩の高橋や竹下佳江に教えを請い、床にはいつくばってボールを追った。

 そうして迎えたワールドカップで、杉山は第2戦の韓国戦からスタメン出場し、再びレギュラーポジションをキープ。しかし、日本は、ワールドカップで最終7位という結果に終わった。

 「私自身の武器は、スピード。走る、跳ぶ、そしてスイングする、そのスピードが速いのが、持ち味です。でも、一方で、速さを警戒する強豪国からは、完全なコミットでブロックされてしまうことが多かった。スピードがある分、分析データから距離やタイミングをきっちりとられ、そこに照準を合わせてくる。そういう局面で、攻撃のパターンが単調になれば、当然、シャットされてしまいます」

 敵が抑えに来たときに、自分はどうコースを打ち分けていけるのか。視野を広くすること、空中での方向転換。手首の返し、スイングの強弱。

 「もう一つ上を目指すためには、そうしたオプションの一つひとつを、セッターとの練習によって、自分のカラダに覚え込ませるしか、ないんです」

 厳しい結果となったワールドカップで得た、自分への宿題。それを念頭に、現在、杉山はVリーグのシーズンを、NECのキャプテンとして戦っている。

 「今季、アメリカ人プレーヤーのエリン(・アルドリッチ)が一緒にプレーしています。彼女は、昨年、大阪で開催された世界陸上の高跳びでもアメリカの代表選手として出場しながら、バレーボールでも活躍しています。彼女が、すごくいいお手本になってるんです。エリンは、助走のエネルギーを垂直方向へのジャンプ力に変換させるテクニックに長けている。そのエリンが、日々行なっている筋力トレーニングを取り入れれば、跳躍力につながるんじゃないかって。実際、彼女は大臀筋やハムストリングスの筋トレを重要視している。今まで、なにげなくやってきたトレーニングの意味も、もう一度考え直すようになりました」

 高跳びの選手であるエリンは、コートに入ると片足踏みきりのブロードで真価を発揮する。そのスピードと跳躍力が、「スピードが武器」と自負する杉山をも、魅了する。

 「私たちバレーの選手が陸上競技の選手と一緒に練習する機会など、これまではなかった。それが、エリンが入ることで実現したんです。ジャンプ力がもっと向上すれば、それだけ筋持久力も上がる。フルセットで戦うような体力的に厳しい局面でも、ジャンプの最低の次元を上げることができるようになるはずです」

 杉山は、竹下、高橋とともに、2000年のシドニー・オリンピック世界最終予選での敗退という苦い経験を共有している。最初の敗北があるからこそ、今の自分がある、と。

 「絶対に悔いは残したくない。3度目のオリンピックへの挑戦は、もう始まっているんです」

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