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カルチョとファッションの蜜月。 

text by

酒巻陽子

酒巻陽子Yoko Sakamaki

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photograph byAFLO

posted2005/07/13 00:00

カルチョとファッションの蜜月。<Number Web> photograph by AFLO

 最近のイタリアンファッションにおいて、サッカー選手が重要な役割を担っていることを知っているだろうか?セリエAの選手はもはやピッチ上でのパフォーマンスに留まらず、自社ブランドを立ち上げる選手まで存在するなど、ファッション界でも注目を浴びている。

 7月5日にACミランへと電撃移籍したイタリア代表ビエリは、3年前にマルディーニ(ACミラン)と共同出資し、ファッションブランド『スウィートイヤーズ』を立ち上げた。ビエリは、ゴールパフォーマンスの際にユニフォームを脱いで、その下から自社のTシャツを見せたり、あるいはそのTシャツを着て記者会見に出席するなど、自らのブランドのPRに力を入れている。また、フィオレンティーナのMFブロッキも、ビエリと共同出資でブランドを展開。さらにはユベントスのGKブッフォンも実姉とカジュアル志向のコレクションを始めたように、サッカー選手によるファッション界への進出がトレンドになりつつある。サッカー選手が手がけるブランドの人気が若者の間で急騰したこともあり、ここ数年でセリエAの「選手ブランド」は4社に増えた。

 「ユニフォーム姿の選手を見慣れている我々には、彼らのオフスタイルは実に新鮮に映る」

 選手ブランドを支持するティーンエイジャーたちは、こう話す。

 コレクションの定番が、Tシャツ、トレーナーやデニムであるため、ユニセックスで体型を選ばない。これが「選手ブランド」が人気を得た最大の理由である。色鮮やかで豊富なカジュアルラインは、まるでビタミンを補給するかのように全く抵抗なく受け入れられた。また、リーズナブルな価格で選手たちと同じスタイルを満喫できることも、人気が広がった要因になっている。

 先日のミラノコレクションでは、ベルギー人デザイナー、ダーク・ビッケンバーグが「サッカー選手」をテーマにしたコレクションを発表。プロサッカー選手をモデルに起用してすこぶる評判が良かった。ビッケンバーグは、サッカーをテーマとして選んだ理由を「若い世代に訴えかけるには、サッカーこそが最もふさわしいと思ったから」と説明していた。

 かつてのイタリアファッションでは「斬新さ」と「気品」が絶対条件だったが、そうした点は、今では気取ることに疲れた国民から敬遠される傾向にある。苦しい業界の中にあって、唯一飛躍しているのが「選手ブランド」であるだけに、ファッション界の巨匠たちも、今後は新しいコレクションの中に「サッカー選手」のイメージを次々と導入していくことになるかもしれない。

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