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開会式、オリンピック公園の静寂。 

text by

松原孝臣

松原孝臣Takaomi Matsubara

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posted2008/08/09 00:00

物々しい警備に包まれる会場周辺。競技以外にも注目すべき点は多そうだ。 8日。開会式の始まる前、スタジアム周辺を歩いてみた。

 フェンスの向こうに、「鳥の巣」スタジアムの屋根が辛うじて見える。入場ゲートはフェンスの並びにあるから、スタジアムまでの距離が遠いことが分かる。

 それでもフェンスに沿って数百人の人々がいた。その中の一人に尋ねると、向かい側の高層ビルに設置されている巨大なビジョンでの開会式中継を楽しむのだと言う。パブリックビューイングだ。

 午後8時がすぎた。花火が打ち上げられる。歓声が起こる。だがビジョンは宣伝を流しているだけでいっこうに中継は始まらない。やがてボランティア・スタッフが人々に伝える。「中継はされない」と。中継するというのは噂にすぎなかったのか。人々は去っていった。やがてあたりは警官とスタッフのみとなり、静寂に包まれた。赤や黄の光に飾られたスタジアムからの音は何も聞こえない。

 「今までだとスタジアムの周辺も人があふれてお祭り騒ぎになるものでしたが、今回はならなかったですね」

 撮影に来ていたカメラマンがつぶやいた。そして続けた。

 「人が大勢集まるのがきっと嫌なんですよ。とくにコントロールできない状態で。街頭中継なんかさせないですよね」

 開幕前に中国各地で頻発した暴動、テロなども影響しているのかもしれない。

 実は6日の午後にも、北京の中心部宣武で路線バスの後部が爆音とともに出火する事件があった、と信頼をおく北京の知人に教えられた。

 日本では報じられているだろうか。

 その場所は聖火リレーのルート上だった。その出来事の起きた時刻のあとに聖火ランナーが通る予定になっていた。

 知人は、隣のエリアで見物していたという。

 「警備が大混乱し二転三転、公安&武装警察がぐったり、うんざりの体でした。大陸メディアはもちろん一切報道しませんが」

 表立っての発表がない以上、事故なのか事件なのかは分からない。

 いずれにせよ、今大会の警備体制がさらに引き締まることはあっても緩むことはないだろう。

 華やかではあったが人数、時間など「大きさ」を誇示するかのような開会式と、スタジアムの位置するオリンピック公園の周囲のあまりの静寂は対照的だった。

 北京に暮らす人々にとって、今のところは身近に感じられる五輪ではなさそうだ。

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