佐藤琢磨 グランプリに挑むBACK NUMBER

ストップ&ゴー 

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西山平夫

西山平夫Hirao Nishiyama

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photograph byMamoru Atsuta(CHRONO GRAPHICS)

posted2006/06/29 00:00

ストップ&ゴー<Number Web> photograph by Mamoru Atsuta(CHRONO GRAPHICS)

 「このモントリオールはこれまででいちばん戦えるコースだと思います」

 金曜日試走を前に、佐藤琢磨はマシンのポテンシャルとサーキットの成り立ちの相関関係について話し始めた。

 モントリオール(ジル・ビルヌーブ・サーキット)は典型的な“ストップ&ゴー”サーキットである。長い直線がシケインやヘアピンのような低速コーナーで結ばれていて、前戦シルバーストンや、F1チームが冬季テストに参集するバルセロナ(カタルーニャ・サーキット)のように中〜高速コーナーがタイムアップのキーになる“コーナリング”サーキットとは対照的なレイアウト。ゆえにモントリオールではいかにマシンの空気抵抗を少なくして、コースの大部分を占めるストレートを速く走るかが問われる。

 むろん、マシンを地面に抑えつける下向きの空気力であるダウンフォースはある程度必要だ。しかしそれはごく小さい値で、SA05でも賄えるもの。だから、と琢磨は言う。

 「最高速を犠牲にさえすれば、ダウンフォースはつけられます。ミッドランドとの差がいちばん小さくなるサーキットでしょう」

 しかし、初日の金曜日から佐藤琢磨は苦戦の連続だった。午前中は1コーナーで「バンプに乗ったらグリップがなくなって一瞬のうちに」スピン。それでも午後のタイムはトップタイムを記録したBMWのR・クビカから2.7秒差で(これなら……)と思わせたが、琢磨自身は「ボクのタイムは新品タイヤを履いて出したものですから……」直接的な参考にはならないと楽観視していない。

 果たして、予選が終わってみると琢磨は21位(チームメイトのモンタニーは22位)と定位置に戻っていた。そればかりか、眼前の敵ミッドランドの20位アルバースともおよそ2秒の差がある。

 「2秒は大きいですね」と、琢磨。さほど必要ではないと思われたダウンフォースも、バンピーで滑りやすい路面にマシンをしっかり押し付けるためにはやはりある程度必要で、ダウンフォースのサポートがないとブレーキングでマシンが安定せず、加速も鈍く、マシンが滑ることによってタイヤがすぐに傷んでしまうことにもつながる。SA05とライバル・マシンとのパフォーマンス差が想像以上だということは、最も差が縮まると思われたここモントリオールでもはからずも証明されることになったわけだ。

 レースは終盤、ミッドランド操るモンテイロを抑える展開となり、琢磨も「なんとしてもモンテイロの前でチェッカーを受けたかった」と言い、エンジンのミクスチャー(空気/燃料比)を最大パワーを絞り出すセッティングにして“攻めて”走ったが、残りあとわずかというところで「縁石に乗ってマシンがスライドして……」壁に当ってリタイアとなった。レース中のクラッシュは今季初である。鈴木亜久里代表は「モンテイロは新品タイヤで追いかけていたからね、しょうがないよ」と、大きな落胆はしていなかった。

 琢磨は序盤、後方から追い上げるD・クルサードと接触してフロント・ウイングを損傷。予定外のピットインを強いられた。コースに戻った時は周回遅れになっていて、後方からトップグループのマシンに迫られるとラインを外して道を譲りタイヤ滓の上を走らざるを得ず、そこで大きくタイムロスしてしまう。

 「ノーズ交換のためにピットインしたところで今日のレースは終わってました」というのが琢磨の総括だった。

 さて、次戦はSA05最後の戦いとなるだろうアメリカGP(インディアナポリス)。2年前に3位表彰台を得たこのサーキットで、琢磨が持てるポテンシャルのすべてを出した時、ミッドランドとの差はどこまで縮まっているだろうか。

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