セリエA コンフィデンシャルBACK NUMBER

根性なければ栄誉なし 

text by

酒巻陽子

酒巻陽子Yoko Sakamaki

PROFILE

photograph byREUTERS/AFLO

posted2009/03/18 21:46

根性なければ栄誉なし<Number Web> photograph by REUTERS/AFLO

 欧州チャンピオンズリーグ(以下CL)でのイタリア-イングランド対決は3試合ともイングランドが制した。イタリア勢の負け方はそれぞれ違っていたが、敵に怖気づき、とりわけホームゲームで真価が発揮されなかった点において共通していたと思われる。

 負けた悔しさは時間が解決してくれるとしても、この度のCLでのイタリア勢敗退でセリエに暗い現実が突きつけられることになった。

 CLを含む欧州カップ戦での、ウディネーゼを除くイタリア勢早々の敗退によって、UEFA(欧州連盟)におけるイタリアの情勢が厳しくなる見方が強まった。情勢の変移はイタリアがCL本大会出場権を一つ失うことを示唆している。

 CLの出場資格はUEFAランキング上位3カ国に4つの出場権、すなわち本大会2つ、予選出場権2つが与えられ、4位以下(6位まで)になると、本大会出場権が1つ減り、出場権は予選組みを合わせて3つになる。最新のUEFAランキングによればイタリアは3位(62ポイント)。因みに首位はイングランド(76ポイント)。それにポイント差3でスペインが2位につける。ドイツが現時点54ポイントで4位だが、今回CL8強入りしたバイエルンミュンヘンの成績次第でイタリアとのポイント差が縮む見込みもある。

 順位を定めるポイントの換算方法を説明しよう。UEFAのランキングは過去5シーズンの欧州カップ戦での成績が対象で、勝てば2点、引き分ければ1点、8強以上に進出すれば1点が加算される仕組み。仮にバイエルンミュンヘンが勝ち続け、さらにUEFA杯のブレーメンとハンブルグの成績が、唯一、イタリア勢の中で欧州カップ戦に生き延びているウディネーゼを上回れば、イタリアは4位陥落になりかねない。CLの一席を失えば自ずからイメージダウン、収益減が付随する。この度のイングランドによる「イタリア撃沈」が予想以上の痛手であるのがわかる。

 今から10年前、イタリアは2位のスペインに8ポイントをつけて首位だった。セリエAの黄金期とされる90年代に獲得したタイトル数は20。そのうちCL決勝戦出場回数は8、UEFA杯決勝戦出場回数は13にも及び、過去数十年の欧州サッカー史に残る偉業と語られた。21世紀になると、スター選手の国外放出。赤字経営。セリエA不正問題といった不安材料が重なり、その栄華は翳りをみせはじめる。2000年以降に奪ったタイトルはすべてミランによる5つのみに激減した。プレー面では、“華麗なカルチョ”、つまりパワーと根性に注力せず、プレーそのものの美しさに拘り続けたために、21世紀に入って猛烈にプレーを磨き、メンタルをも強化したイングランドにお株を奪われることになった。

「技術と根性があれば栄誉を得られる」。イングランド勢が備えているそんな勝負を恐れない気迫は、残念ながら今日セリエA上位を占めるチームには欠片もない。イタリア勢には常に敵に対する「疑心暗鬼」があり、相手のことを考えすぎるゆえに、怖気づいてプレーが機能しなくなる。とりわけ欧州カップ戦では「気力のなさ」で敵に負けているではないか。

 今こそ、選手たちのメンタルコンディションを最重視する。相手への必要以上の疑念を捨てて、精神に余裕を持たせるメンタルの強化策をとるべきである。

 今回のCLで身に染み付いたイングランドの脅威。相手を「鬼」とするより、いっそのことこちらが「鬼」になってしまえば、怪物イングランドを倒すことも可能だろう。因みに近年、唯一イングランドの強豪(リバプール、マンチェスターUTD)を制したミランの愛称は「ディアボロ(悪魔)」ということを、他のクラブも心得てほしい。

ページトップ