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不運続きのベッカムが戸惑っていること。 

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鈴井智彦

鈴井智彦Tomohiko Suzui

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photograph byTomohiko Suzui

posted2004/01/29 00:00

不運続きのベッカムが戸惑っていること。<Number Web> photograph by Tomohiko Suzui

 ライアン・ギグス(マンチェスター・ユナイテッド)も疑問に思っていた。だから、ベッカムがレアル・マドリーと契約したときにこう聞いたという。右サイドにはフィーゴがいるけど、どこでプレーする気なんだい、と。

「だけど、ダビッドはいつも中盤でプレーしたいと言っていた、いつの日か変えたいとね。だからこそ、ケイロスは彼を新しいポジションに置くことができたと思う」

 ベッカムは変わった。あの右サイドの印象はずいぶん昔の話に思えるぐらいに中央でのベッカムは23番が板についてきた。

 しかし、思わぬアクシデントが彼を襲った。ロンドンでクリスマス休暇を家族と過ごした後、レアルの仲間とともに再スタートを切ったベッカムだが、今年初のムルシア戦で右足のくるぶしを削られたのだ。みるみるうちにストッキングが赤く染まっていく。8分間耐えた後、グティと交代せずにはいられなかった。

「反対の足首にも痛みを抱えていたことをドクターに話していた。マンチェスターのときにも2年間ほどケガに苦しんだことがあるけど、これほど身体にケガが蓄積したのは初めてだ。でも、これはボクの問題であり、意識して共存していくしかない」

 昨年までは背中に痛みを背負っていた。今シーズンも開幕前からしっくりこない左足に苛立ちを募らせていた。さらに、ムルシア戦でくるぶしを負傷したベッカムは「これは普通のことだよ」という。ドクターは足首にプロテクターを勧めるが、彼は拒否する。「プロテクターをするのは好きではない。シューズをできるだけじかに感じたいからね。とくにフリーキックを蹴るときは」

 そんな負傷続きのベッカムはさらなる不運に見舞われた。今度は退場である。コパ・デル・レイ(国王杯)のバレンシア戦で2枚のイエローカードを受け、スペインで初めての退場処分を宣告された。ベッカムの退場劇で有名なシーンは1998年ワールドカップの対アルゼンチン戦だ。2000年にも、クラブ選手権で赤紙を食らっているが、プレミアではジェントルマンのイメージが強かった。しかも、マンチェスターでは6枚しか受けたことのないイエローをレアルではすでに4枚頂いている。

 確かにプレミアとスペイン・リーグはファウルの基準が異なっている。スペインはいたって演技派揃い。選手は紳士にほど遠く、審判も自尊心にうぬぼれやすい。数字にすれば分かりやすい。プレミアが22節を終えた段階でイエロー796枚、レッド38枚に比べ、20節を終えたスペイン・リーグではイエロー1185枚、レッド77枚と恐ろしい。

「レフリーは過ちを犯したと思う。イギリスではあれで警告は考えられない」というベッカムはレアル・マドリーで公式戦警告数ランキングのトップを走る。センターでのプレーには満足のいく結果を出しているベッカムだが、スペイン人の判定には戸惑いがちだ。

 ビジャレアル戦でも、度重なるファウルに怒りを露にすれば、汚いファウルを犯したときには相手選手に握手を求め、和解を忘れなかった。また、フリーキックではロベルト・カルロスとどちらが蹴るかで笑顔をのぞかせる。エリートで人気もあれば嫌味のひとつも言いたくなるけれども、そんな喜怒哀楽がはっきりしたベッカムにはどことなく憎めない一面がある。

 フロレンティーノ・ペレス会長は冬のマーケットでマンチェスターのニッキー・ブットにオファーを出したという。ベッカムの横に旧友のブットを並べる。イバン・エルゲラを最終ラインに戻すという考えだ。マンチェスターは新たにブラジル人のクレベルソンを獲得し、これでは彼はロイ・キーン、ポール・スコールズに続いて4番手である。マクマナマンが去ったいま、ベッカムに必要とされているのは、母国語で話せる仲間なのかもしれない。ジダンにはマケレレが、ロナウドにはロベルト・カルロスやフラビオがいたように母国の仲間がひとりいるのといないのとでは大きく生活もプレーも変わってくる。ベッカムも英語でグチのひとつも言いたいだろうに。

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