東洋大学では箱根駅伝2区で区間新記録を出し、旭化成入社後も10000mで日本記録を樹立して東京オリンピックに出場するなど、若くして数々の栄光に輝いてきた。だが、ここ数年はもがき苦しんでいるように見えた。2度走ったマラソン、1年後に迫ったMGC、そして初めて得ているアスリートとしての充足感。前編・後編合わせて60分、29歳の大器にじっくりと話を聞いた。<前後編の2本立て/後編はこちら>
「手応えでいうと、社会人1年目の2020年、優勝した日本選手権ぶりぐらいの手応えがあります。やっぱり勝てるレースって、走っている途中で『勝ち筋』みたいなものが見えてきて、そこをたどっていけばいいという感覚になるんですけど、久しぶりにそれが見えたレースだったかなと思います」
ひさしびりに向き合った相澤晃の表情は、とても明るかった。

これはかなり意外だった。インタビューを申し込んでおいて失礼かもしれないが、もう少しシリアスな彼と向き合うことになるかと思い込んでいたのだ。
この1年の相澤の歩みを振り返ると、外からは捉えどころがなかった、というのが取材前の本音だったためだ。
昨年9月、ベルリンで初マラソンに挑むも2時間35分54秒。「大撃沈」と言ってもいいだろう。今年のニューイヤー駅伝はエース区間の2区に起用されるもインフルエンザの影響で区間12位、2月の大阪マラソンは2時間11分13秒で50位と停滞の気配が漂った。だが、5月のゴールデンゲームスinのべおか(GGN)の5000mで13分24秒97と約5年ぶりに自己ベストを更新。6月の日本選手権5000mはふるわなかったものの、何か光明が見え始めたのか、と想像を巡らし、取材を申し込んだ。
冒頭で相澤が生き生きとした表情で「手応え」を語ったのが、そのGGNのレースについてだ。ではなぜ一気に調子を戻せてきたのか。ここに今回の相澤の表情が明るい理由がいくつも隠されていた。
マラソン練習で「思考法が変わった」
相澤が真っ先に理由にあげるのが、練習メニューに対する思考が変わったということだ。
「昨夏からマラソン練習をするようになって、思考が変わりましたし、練習方法もすごい変わった。自分自身を根本的に変えなくちゃダメだと思うようになったんです」

では具体的に、練習がどう変わったのか。
「練習メニュー自体は、正直トラックをメインでやっていた時より強度的には低いんです。いわゆるキツい練習の量は減りました。でも、ボリュームをしっかり追うようになったんです。それが、すごく自分にとってプラスになっているという実感があります。『速くなっている』という実感がある。去年の秋、ベルリンマラソンの後からずっと手応えがあって、大阪は結果にはつながらなかったんですけど、GGNでようやく結果につながったのでこの方向性で間違ってないなと」
長距離ランナーが「ボリューム」を求める。要するに、走る距離を増やす、ということだ。こんなシンプルな変化が、日本のトップランナーの処方箋になったことに驚き、やや戸惑っていると、相澤は過去にとらわれていた思い込みについて話をしてくれた。
「自分に足りないのはスピードだとずっと思っていて……。もちろんスピードは海外の選手と比べたら足りないんですけど、その思いが強すぎたというか。自分の過去を振り返ると、大学時代の箱根駅伝など長い距離で結果を出し、それをトラックの短い距離につなげていったところがあった。東京五輪で世界との差を実感して、スピードばかり追い求めていたんですが、実は自分に合っていたのは、やはりそっちの(距離を踏む)アプローチだったと最近気づきました」
この間の変化について、相澤は詳しく明かしてくれた。旭化成の先輩との何気ない会話、井川龍人らとの400mレペで得た予想外の充実感、10000mベストも更新できるという手応え。これらのエピソードや練習メニューの具体的な中身と詳細については、ぜひ動画インタビューをご覧いただきたい。

「修羅って感じ」尊敬する日本人選手は?
動画では以下のトピックについても語ってくれている。
- 得意な練習は「VO2を追い求めるもの」の罠
- 「速くなっている実感」は日本選手権優勝でも得られなかった
- 大六野秀畝の衝撃のアドバイスとは?
- これまで怪我が多かった部位と原因
- 今の長距離界を見て感じる「まだ自分も勝負できる」
- GGNの1週間後に乳酸カーブテストで「LT値が……」
- ベルリンと大阪、2本のマラソンから得たもの
- マラソン失敗で「悔しいと思えなかった」理由は?
- 相澤晃2.0の誕生「時間がかかりましたね」
- 「修羅って感じ」尊敬する日本人選手は?
爽やかな表情で、いま自分が手にしている手応えについて語ってくれた相澤。次のマラソン、そしてトラックにも大きく期待をしたくなるインタビュー、大学駅伝の活躍、そしてその後の苦しんだ姿を見てきたファンにぜひご覧いただきたい。
※動画の配信画面は、NumberPREMIERにご入会いただき、ログインをしていただくと本ページ上部に表示されます。他の動画も見放題、記事も読み放題です。
プラン紹介
「雑誌+年額プラン」にご加入いただくと、全員にNumber特製トートバッグをプレゼント。
※送付はお申し込み翌月の中旬を予定しています
「雑誌+年額プラン」にご加入いただくと、全員にNumber特製トートバッグをプレゼント。
※送付はお申し込み翌月の中旬を予定しています
このシリーズの動画を見る
記事


