メジャーのキャンプは、綿密なメニューに沿って黙々と進行する。声が激しく飛び交うこともなければ、ユニフォームを泥だらけにするようなノックも行われない。全体練習は3時間ほどで終了する。それだけみていると、物足りなさを感じるが、ファンやメディアの目の届かないところで、選手たちの個人練習は朝早くから日没まで続く。そして、そんな選手たちの“主役”として、キャンプ地に緊張感を持たせているのが、マイナー契約の招待選手である。
キャンプ取材ではどうしても主力選手の調整具合に目が向きがちになるが、一方では、招待選手にも大いに興味をかき立てられる。将来性豊かな若手のチャレンジはもちろん、復活を賭けたベテラン選手たちの動向が気になるからだ。日本人選手でいえば、2年ぶりのカムバックを目指す野茂英雄を始め、桑田真澄、高津臣吾、薮恵壹の1968年生まれカルテットである。複数年契約を交わす主力選手にとっては、開幕までのスプリングトレーニングは単なる調整の場だが、彼らのような、招待選手という名のテスト生にとっては、生き残りを賭けた正念場なのである。
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photograph by Yukihito Taguchi