表彰台に3位のスペースがない。本当はあるのに、ないように見えた。
3月24日の「フィギュアスケート世界選手権」。酒場のテレビに表彰場面を眺めていたら、安藤美姫の歓喜、浅田真央の充実が画面いっぱいに広がっていた。悪くない光景だ。それはそれでよい。ただし3位のキム・ヨナは遠景でもまったく映らない。ふたりの日本選手の輝きを心から応援していた酔客が「あんまりじゃないの」と言った。
断言できるのは、善良なるファンの「外国の選手であろうとも表彰式の姿くらい映されるべきだ」という感覚は、放送局社員のおかしなほどの高給を維持するための仕組みの前には無力である事実だ。つまり視聴率のためなら気にもとめない。そもそも、そんな声が起こると想像もしない。かつては「これでよいのか」という多少の逡巡とともに行われたスポーツ中継の演出は、時を経て、まるで良心に触れない当然の方法となった。
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photograph by Takuya Sugiyama