福永祐一騎手が「そこだけはこだわりたい」と話していた年間100勝を、12月18日の阪神9レース、高砂特別をラヴケリーで勝利して区切りをつけた。これで'10年から始まった年間100勝以上の継続を13年連続と伸ばした。
意外なことに、あの武豊騎手も9年('92~'00)、8年('02~'09)でそれぞれ途切れさせてしまった記録で、ルメール騎手も継続中ではあってもまだ8年。福永の13年がJRAの断然のレコードなのだ。1年間を通して無事に、しかもコンスタントに勝ち続けてこその記録なので、我々が思っている以上に難易度が高いことがわかる。福永が「こだわりたい」とした意味が、瀬戸際の年末に達成されたことで実感として伝わってくる。
ご承知の通り、福永は'22年に初めて調教師試験の願書を提出し、133人が受験した一次の筆記試験、23人に絞られた二次の口頭試問の難関を突破して、'23年3月1日付けで交付される新規調教師免許の権利を手にした。
彼ほどのキャリアなら受かって当たり前と思う人も多くいるはずだが、試験は忖度なしの判定で予断は許されるものではなかった。願書を提出した時点で報道各社の福永番記者に正直に告白した福永だが、「記事にするのは二次の合格発表まで控えてほしい。不合格だった場合は受けたことを含めて完全スルーで」と要望した。
騎手のセカンドキャリアとして、調教師はまさに王道だが、福永ほど勢いのある状態で転身を図るのは過去に例がない。不合格に終わったときの居心地の悪い空気を心配した彼の気持ちも理解できる。
福永祐一の調教師志向は、かなり前から匂っていた。試験のための勉強とはいかなくても、受験経験者から出題の傾向を探る場面を何度も目撃したし、調教師となったときの実務としてセレクトセールを積極的に視察したのは10年以上も前からだ。コントレイルという傑出馬と出会ったことで何年か受験を見送ることになったが「どこかで踏ん切りをつけないといけない」と、まさに満を持しての受験だったのだ。
有馬記念ではボルドグフーシュを2着に持って来て、騎手としての残された時間に全力を尽くす姿勢を示した。勝っていれば8大競走全制覇の勲章も手に入ったところだが、彼が見据える未来の輝きは別次元だ。
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