ドーピング。思い浮かぶのは、かつての東ドイツの女子砲丸投げ選手、ハイディ・クリーガーの変わり果てた容貌である。冷戦下、体制の求めでホルモン剤を執拗に投与され、もはや年齢相応の「男性」として生きる。
スポーツを権力維持の手段とする独裁政治。札束に目のくらんだ悪徳医師。強欲なエージェント。2018年1月、日本で明らかとなった事件には、それらの影は見当たらない。まるで小学校のクラスで起きる出来事のようだ。
自分より運動や勉強の得意な友だちの上履きを下駄箱から隠す。椅子にこっそり画鋲を置く。そして給食の牛乳に……。
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photograph by KYODO