地味な表紙と侮ることなかれ。この本は、知っているようで知らないパラリンピックの「い・ろ・は」を教えてくれる実に有意義な1冊なのである。
本書は早稲田大学の全学共通講座「パラリンピック概論」の教科書。と言っても初年度の講義録が元なので読みやすい。
日本ではパラリンピックを「オリンピックのおまけ」のように捉える人が未だ少なくないが、じつは世界第3位のチケット売上を誇るスポーツイベントだ。この障害者スポーツの祭典は、なぜ「リハビリの延長」から「競技性の高いスポーツ」へと変貌を遂げたのか?
そもそもは第二次世界大戦後、英国首相のチャーチルが脊髄を負傷した兵士のために始めたリハビリプログラムが起源という。そのリハビリ科長、ルートヴィヒ・グットマン博士の「失われたものを数えるな、残されたものを最大限生かせ」という言葉が、戦争で傷ついた患者たちの体と心を支えるだけでなく、20競技503種目の金メダル(ロンドン大会。五輪より201も多い)を巡って争う世界中のパラリンピアンの心に火を点けた。
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photograph by Wataru Sato