消せない記憶を世界に刻みつける。しかし、本人の記憶はへっちゃらで屈折する。それが芸術家だ。それがファイターだ。それがカリスマだ。それが天才なのである。
モハメド・アリ、若きカシアス・クレイは、生まれ育ったケンタッキー・ルイビルでの人種差別に憤り、ローマ五輪の金メダルをオハイオ川に投げ捨てた。アリをアリであらしめた逸話だ。
どうやら嘘である。ただし世界(そう記すしかないのだ)が信じたのも無理はない。
ローマから故郷へ凱旋した15年後、1975年に出版された自伝『The Greatest, My Own Story』にアリその人の述懐がある。
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photograph by Bob Gomel/Getty Images