「きょうはトスを全部、(木村)沙織さんに持っていきます」
セッター宮下遥の目に、毅然とした光が浮かんでいた。
5月14日から22日まで東京体育館で行なわれたバレーボール女子のリオデジャネイロ五輪・世界最終予選兼アジア大陸予選。日本が4大会連続の五輪切符に王手をかけて臨んだイタリア戦の開始前、21歳の司令塔は、キャプテンのエースアタッカー木村を前に、自らの決意を再確認するかのように、そう告げた。
15歳でV・プレミアリーグデビューを飾り、18歳で全日本デビューも果たした逸材が、初めてほぼ1人でトスを上げきった今大会。木村は4日前の韓国戦で負傷した右手小指の痛みも忘れ、若き正セッターの思いを受け止め、31得点を決めた。エースの大活躍を引き出したのは、信念を貫いた宮下のトスワークだった。
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photograph by AFLO