牝馬として64年ぶりにダービーを制し、計GI・7勝。歴史的名牝は今アイルランドで繁殖生活を送っている。海外GI制覇という母の悲願を仔へと託して。
ウオッカが引退して5年が過ぎた。
わたしたちが最後にウオッカの姿を見たのは2009年のジャパンカップである。オウケンブルースリの追い込みをハナ差凌いで勝ったあのレースでウオッカは鼻出血をする。ルールで1カ月間の出走停止となり、国内のラストランに予定していた有馬記念に出られなくなった。
そしてほんとうの引退レースとすべきドバイワールドカップをめざしてUAEドバイに行ったが、前哨戦のGII(8着)でふたたび鼻出血、引退が決まったのだった。
ウオッカは日本に戻らず、母となるためにアイルランドに渡った。
10月はじめ、ウオッカの馬主、谷水雄三をたずねた。ゴルフ場の経営を本業とする谷水は、オーナーブリーダー(生産者を兼ねる馬主)として北海道新ひだか町でカントリー牧場を営んでいたが、ウオッカがアイルランドに渡って2年後に牧場の閉鎖を決めている。生産馬の成績が落ち込んだわけでもなく、経済的に苦しくなったわけでもない。突然の閉鎖だった。
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photograph by Masumi Seki