へミングウェイが生前発表した最後の作品だ。処女長編『日はまた昇る』を生み、内戦に参加し、多くの作品の舞台にしたスペインは、作者には第二の祖国だった。国技・闘牛にも魅せられていた。本書は作者最晩年の闘牛観戦ルポルタージュ、1960年「ライフ」誌に連載された。
ヘミングウェイには旧知の二人のスター闘牛士がいた。一人はトップの地位を自認するルイス・ミゲル。もう一人がミゲルの妹の夫アントニオ・オルドネスで、以前から自分の方が義兄より偉大な闘牛士だと確信していた。その二人の対決のひと夏を作者はスペイン中を旅して追っていく。あらゆるスポーツのライバル間の競争は、人気評価のギャラの問題をも含めて、誇りをかけた技量の戦いだ。猛牛を介した二人の争いは、しだいに危険な技のエスカレーションになっていく。鋭い観察眼と繊細な心を力強いドライな文体に沈めて綴る(これでマッチョ作家と誤解される)ヘミングウェイ・スタイルの闘牛描写に酔わされる。
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photograph by Sports Graphic Number