クロサワ映画では、武者たちは馬の右側から乗り降りする。時代考証として正しい。だが、戦国期の日本に住んだフロイスから幕末、明治に至る日本を訪れた外国人たちの記述は、一様に「馬には左側から乗るものなのに、日本人は右側から乗る」と不思議がった。昔の日本の騎乗者は武士だ。右乗りは左手に弓を持っていたから、とか、左腰に刀を差していたからと言うが説得力は弱い。著者は広く文献を探ってシベリアのツングース族が右乗りをしていたことを突き止める。この風習が日本に渡来したのではなかろうか……歴史ロマンあふれる仮説を説く著者のペンは実に楽しげだ。
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