タイトルで「巨人栄光の物語か」と誤解しないでほしい。本書は昭和34年(1959年)の長嶋サヨナラホーマーの天覧試合から昭和49年(1974年)の長嶋引退までの“日本野球史”だ。プロ野球が中心になるが、社会人野球、大学野球、高校野球にも目を配り球史に残る試合、出来事、人物を簡潔に語って、プロ野球が国民的娯楽となった16年間の情報を満載した年代記だ。集めた資料を突き合わせ、関係者に話を聞き、取材した多くの材料から絞り出したエッセンス。
といって年鑑のような味気ない記述ではない。著者は読売新聞の社会部から巨人代表を経て、退社後も取材を続け、40余年の間に300人を超える野球人と話したという。事実にこだわる“足で書いた”平明な文章が複雑な出来事も読む者の頭の中にすっきり収めてくれる。競技の歴史を正確かつコンパクトに語るこの種の本は、非常に少ない。取材に大変な手間がかかるためだろう。
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