言動はともかく、興行面での看板力士だった朝青龍を失い、大阪春場所はその影響が心配されていた。初めて一人横綱となった白鵬は、その重責を楽しむかのような段違いの相撲内容で全勝優勝を果たす。もはやその強さは異次元の世界だった。しかしその白鵬の優勝決定を千秋楽結びの取組まで延ばしたのは、関脇把瑠都の驚異的な頑張りだった。
把瑠都の直近2場所の成績は9勝と12勝だったが、場所前、友綱審判部長は大関昇進の条件に「優勝争いに絡んでの13勝以上」という厳しいノルマを課した。
だが把瑠都は初日の6日前の稽古中に左手親指の付け根部分を負傷してしまう。検査の結果、靭帯損傷が判明し、「指4本じゃまわしを切られるから、四つは難しい」と険しい表情を浮かべた。満足な最終調整が出来ず、初日を前に正直不安で一杯だったに違いない。しかし把瑠都は本場所中、怪我の影響を微塵も感じさせない取組を披露した。
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photograph by KYODO