亀田兄弟ほどスキャンダラスなボクサーは、過去の日本のボクシングシーンのどこにも見当たらない。
ファイティング原田以降60人の世界チャンピオンたちのライズ・アンド・フォールを見てきたが、亀田兄弟は他のどのチャンピオンともキャラクターが異なる。わがままと言われた藤猛や浪速のジョーでさえ、試合となれば大きな声援を背に戦ったが、亀田兄弟は時に同胞からのブーイングも浴びて戦わなければならない。亀田の試合の高いテレビ視聴率獲得に大いに貢献しているのは、彼らの言動が生み出したアンチのファンであろう。
ボクサーとしては、とくに興毅の場合、申し分ない。スタイルはあくまで正攻法。口ほどに好戦的ではないが、本質は喧嘩屋ではなくアウトボクサーなのだ。手も脚も速く、防御は慎重すぎるほどしっかりしている。勘の良さは攻撃面より専ら防御面で発揮される。両手でガードを固めるあまりジャブが少ないという技術的な指摘もあるが、それでも17歳から6年のプロ歴で22戦して1度の敗北も喫していない。「ランダエタ初戦は負け」と信じるファンがいたとしても、興毅のボクサーの資質は認めなくてはなるまい。
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photograph by BOXING BEAT