甲子園の風BACK NUMBER
夏春連覇、日本中が熱狂した池田高校野球部に起きた“異変”…なぜ甲子園から“消えた”のか?「美談は言わないよ」あの名物監督に次々と新証言
text by

田中仰Aogu Tanaka
photograph byAFLO
posted2026/07/25 11:02
池田高校を率い、3度の甲子園優勝を果たした蔦文也監督
わたしは指定された住所に向かっていた。瓦屋根の邸宅の玄関先に七〇代くらいの男性が立っていた。アディダスの紺色のポロシャツに、下は明るい紫色のジャージ。背筋は真っ直ぐに伸び、髪も綺麗にとかされている。
「美談は言わない。それでもいいなら」
自宅での取材を承諾してくれたことにお礼を言うと、その男はほほえみながら軽くうなずいた。今わたしの眼の前にいる好々爺は、電話口の印象とまるで違った。取材の打診をしたときに「美談は言わない。それでもいいなら」という意味深な発言があったからだ。
応接間に通され、ソファに座った。
ADVERTISEMENT
まずは、かつて日本中から愛された蔦監督について取材していることを、あらためて説明する。本格的な取材に入る前に、地方公立校が三度も甲子園を優勝したなんて信じられません、と伝えた。ひとまず「当時はすごかったですね」と誘い水を向ければ、会話が弾むだろうと考えたからだ。
しかし、目の前に座る男は不敵な笑みを浮かべてきっぱりと言った。
「まあフィクションも多分に含まれてるわね」〈つづく〉
記事公開から1年に及ぶ継続取材を経て完全書き下ろしで書籍化。“高校野球界最大の謎”を追ったミステリーノンフィクション『監督、神になる 池田高校 記憶の衝突』(著:田中仰)が7月29日についに発売。
チェックを入れてボタンを押すだけ
Number Webを見つけやすくする
