甲子園の風BACK NUMBER
「じいちゃんに“裏切られた”と感じている人もいる」国民的監督の孫が“驚きの告白”…甲子園から消えた名門・池田高校を率いた蔦文也のナゾ
text by

田中仰Aogu Tanaka
photograph byJIJI PRESS
posted2026/07/25 11:01
池田高校を率い、3度の甲子園優勝を果たした蔦文也監督
「じいちゃんに裏切られたと感じている人もいる」
少し空気が温まってきたところで、映画の終盤に収められていた内容にも触れた。当時、生徒から蔦監督への不満もあったんですね、とわたしは言った。
「人によってじいちゃんの捉え方は違うと思うんです。蔦文也の存在があったから野球がうまい徳島の選手は池田に集まった。それまで一般的ではなかったウエイトトレーニングやポカリスエットをいち早く取り入れて、打ち勝つ野球で高校野球の常識を変えた。これが蔦文也のA面です。一方で、池田町の神様みたいな存在になったじいちゃんに、誰も意見できなくなっていったというB面もある。もともと頑固で自分の信念を貫く人。そこに甲子園優勝という実績がついたから……。当時近かった人の中には、じいちゃんを嫌いな人もいたみたいです。じいちゃんに裏切られたと感じている人も」
蔦文也に裏切られた人がいる――。たしかに映画で蔦に対して、直接的な批判とまでは言わずとも、苦言めいた言葉を発していた関係者がいた。あの男のことだろうか。
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哲一朗は惜しみなく、祖父に関する情報を提供してくれた。
「なんでも協力しますので言ってください。祖父を取り上げてくれるのは僕もうれしいので」
池田へ向かった記者の“目論見”
その一週間後、わたしは初めて池田高校へ向かった。
地方取材特有の高揚感に浮かれていた。黄金期の熱狂を体感していないからこそ、開き直って初歩的な質問ができるという気楽さもあった。
高校野球で空前の人気校になった当時の池田町の光景、監督の蔦にまつわるエピソード、現在の野球部の様子を押さえられれば、まずまず面白い記事になるだろう。哲一朗が言った「裏切られた」という人物にも会えたら読み応えのある記事になりそうだ。そんな打算も、わたしの足取りを軽くさせていた。
