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「これは誤審ではないか?」“疑惑の軍配”に翔猿の本音…「(相撲は)いや、楽しくはないですよ」人気急上昇中、32歳力士の無骨な素顔
posted2024/11/05 17:00
text by
佐藤祥子Shoko Sato
photograph by
Hirofumi Kamaya
大の里が大関昇進を決め、話題をさらった先の9月秋場所。翔猿は5勝10敗と大きく負け越してしまう。
しかし西前頭筆頭の番付で上位陣をかき回し、その存在感には目を見張った。
「『翔猿は何かやってくれそうだ』と思われているみたいですが、自分はただがむしゃらにやっているだけなんですよ。勝ちに行ってるだけです」
真っ直ぐな視線をこちらに向ける。
3日目、結びの一番。相手は大関琴櫻だった。軍配は琴櫻に上がるが、この一番は物議を醸すことになる。
土俵際、際どい相撲となり、琴櫻が腹から落ちるのが早く、翔猿の足が残っていたように見えた。しかし物言いもつかず、「これは誤審ではないか」と誰もが翔猿に同情したものだった。
翌4日目には引き落として大関豊昇龍を下したものの、琴櫻戦の悔しさは、1カ月以上経っても、まだ癒えていない。
「同情されても……。なんて言ったらいいんでしょう。悔しいというより、どうにもうまく言葉にできないんですよ。この気持ちは、たぶん一生消化できないかもしれませんね。もう、圧倒的な相撲を取って強くなるしかない。そう思うしかないんですけど」
行司や審判批判を口にはしないものの、一戦一戦に命を懸ける“勝負師”だ。その表情と言葉に、無念さをにじませていた。
「(相撲は)いや、楽しくはないですよ」
13日目の宇良戦では互いに低く構えて隙を狙い、押し合い、いなし合う見ごたえのある攻防を繰り広げた。ふたりの熱戦が、満員御礼の国技館の土俵を沸かせてもいた。身長173cm体重135kgの翔猿に、身長175cm体重140kgの宇良。体格は同等で、現在の相撲界では小兵の部類に入る。
宇良とは入門時期が1場所違うものの、相撲教習所で一緒に学んだ仲でもあるという。
「実は、当時ふたりで『一緒に幕内の土俵を盛り上げたいね』と話していたことがあったんです。僕の出世が遅くてなかなか叶わなかったんですけどね。その意味では宇良戦は楽しみでもあるーーと言えるのかな」
この日の宇良戦でははたき込みで惜敗するが、14日目の湘南乃海戦では、珍手の“素首落とし”を決めている。
小学生時代から始めた水泳と野球で培った運動神経。今や土俵狭しと動き回る業師でもあり、イキイキと相撲を楽しんでいるようにも見えるが。
「いや、楽しくはないですよ。そりゃあ勝てば楽しいですけどね……」
キリリと整えた眉毛に、スキンケアを怠らない美肌の小顔。イケメン力士として名を馳せるが、無骨な一面を持ち合わせてもいる。