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0.03秒差の明暗…“史上最高レベル”日本選手権でハードル女王・福部真子(28歳)と2位・田中佑美(25歳)が語った「ライバルたちとの絆」
text by
和田悟志Satoshi Wada
photograph bySatoshi Wada
posted2024/07/02 17:02
「史上最高レベル」の日本選手権だった女子100mハードル。左から優勝した福部真子、3位の寺田明日香、2位の田中佑美
今年に入ってからは、2月のメルボルン、4月の織田記念、5月のセイコーゴールデングランプリと田中の後塵を拝してきたが、この日本選手権にはきっちりと合わせてきた。
予選が12秒85、準決勝が12秒75、雨に見舞われた決勝も12秒86と、いずれのラウンドも全体のトップ。やはり今大会の福部は、一番強かった。
惜しくも100分の3秒差で敗れ2位に終わったのが田中だった。田中にとっては日本選手権の過去最高順位だが、フィニッシュ後には悔しさを募らせていた。
パリ五輪の出場資格を得るには、有効期間内に参加標準記録を突破するか、ワールドランキングでターゲットナンバー(出場枠)の40位以内に入らなければいけない。田中は5月のセイコーGGP2位、昨年のアジア大会3位の実績のほか、冬季には海外遠征し、室内のレースや大会のカテゴリーが高いレースで着実にポイントを積み上げてきた。
セイコーGGPを終えた5月半ばの時点では33位と、十分に出場できる順位につけていた。しかし、田中が想像していた以上に世界のレベルは上がっていた。いつの間にかランキングは出場圏のギリギリになっていた。
「自分が本当に欲しいと思うものってなかなか少ないんです。今回はポイントを稼いだ時点で(五輪代表の座を)手に入れたつもりでいたんです。それが自分のポジションが大きく変わっているのに気づいて、その中でベストを尽くすのはすごく大変でした。でも、その中で力を発揮してこその強さだと思うので、それを目指してやってきたのですが……」
自己ベストも参加標準に届かず…落胆の田中
悔やまれるのは準決勝のレースだ。12秒85の自己ベストだったものの、パリ五輪の参加標準記録には届かなかった。
「たぶん普段の試合だったら『思ったより出ました』って言っていたと思うんですけど、正直、もうちょっと出て欲しかった。今回は自分に軸があるんじゃなくて、参加標準記録に軸があるので」
タラレバは禁句だが、福部が走った準決勝第1組が追い風だったのに対し、田中らの第2組は微風ながら向かい風だった。
決勝は、勝利と標準記録突破を目指して「スタートから3台目までしっかり加速するために、1台目で絶対怯まないっていう気持ちでスタートを切りました」と攻めたレースを試した。「全体で2、3台バランスを大きく崩した」と修正すべき点が多々あったが、雨天の悪条件でもセカンドベストで走った。それでも福部にも、標準記録にも届かなかった。
7月1日の時点ではまだ出場圏内の40位につけているが、日本選手権と同日には世界各地で大会があり、7月2日に世界陸連からオリンピック出場資格者が公表されるまでは予断を許さない。