「事務所に怒られるかな…でも本当のことなので」

　休養期間は、悩みと深く向き合うことにもなった。自分にしか分からない悩みだから、相談もできない。そう思い込んでいた。そもそも「愚痴とか弱音は絶対に言っちゃいけないと思ってました」。そういう性格、としか言いようがなかった。

「こんな話したら事務所に怒られるかな……でも本当のことなので。休養して時間は取れるようになったんですけど、そうなると他の人たちが気になってしまうんです。プロレス界で何が起きてるかは自然に目に入ってくるし、AVの世界では綺麗な女優さんがどんどんデビューしてくる。自分で休むと決めたのに“自分は何してるんだろう”、“自分だけ頑張れてない”って。昼間はそうやって落ち込んで、家から出られない時もありましたね。逆に夜は眠れないんです、妙にテンション上がっちゃって」

復帰戦だけに手探りの闘いでもあったが、格上からの勝利は勲章だ　©Norihiro Hashimoto

　何もしないというのもストレスなのだと知った。「落ち込んだり元気になったりの繰り返し」の中で、ようやく周囲の人間に頼ることができた。

「1人で抱え込むのは辛すぎました。口に出して誰かに伝えるのが大事なんですね。特に救われたのはお兄ちゃんと電話で話すこと。具体的なアドバイスなんてないんですけど、それでよかったんです」

太ももは女性のウェストほどのサイズに

　トレーニング再開は自宅に近いジムに行くことから。メンタルが回復してくると、仲間たちと合同トレーニング。トップボディビルダーであるジュラシック木澤のパーソナルトレーニングも受けた。

「凄く勉強になりました。呼吸するタイミングだったり、今までやってきたトレーニングと全然違うんですよ。教わったことを普段のトレーニングでもやってみたら、前より（重量が）上がりました」

メンタル回復後はトレーニングも再開。太ももはなんと64センチになった　©Norihiro Hashimoto

　やはり筋トレの話になると目が輝く。下半身のトレーニングには以前より力を入れるようになった。

「週1日から2日に増やしました。下半身って単純に考えて体の半分じゃないですか。なのに1日だけは少ないなって。上半身は胸とか背中とか日を分けてやりますからね」

　太ももは64センチ、女性のウェストほどのサイズになった。MMAファイター・渡辺華奈との公開練習ではお尻の筋肉を絶賛されている。渡辺曰く「これだけの筋肉は相当な練習じゃないとつかないです。触りたくなりますね（笑）」。

【次ページ】　プロレス復帰戦で見せた“レスラーとしての本質”