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「次世代の井上尚弥」と呼ばれる男の異例すぎる挑戦…井岡一翔の前座でデビューする超新星・堤駿斗(22)の“逸材”ぶりが凄い
posted2022/07/12 06:00
text by
前田衷Makoto Maeda
photograph by
AFLO
近年アマチュアで活躍したボクサーがプロに転向するケースが、以前に増して多くなっている。
現役の男子に限っても、アマの全国大会(全日本選手権と国体)で優勝経験を持つ選手が19名もいる。これは高校の全国大会優勝者を含めるとさらに多くなる。アマでは無冠に終わった選手まで含めると、数え切れないほどの「元アマ」が活躍中だ。
井上尚弥ら現役の世界チャンピオン6人全員がアマ経験者。今や日本のトップで活躍している選手の中で、「叩き上げのプロ」を探す方が難しいのではないか。
なぜそうなったのか。最近のプロ(協会)とアマ(連盟)の関係が良好なこと、選手とジムとの間の契約形態が変わり、選手に選ぶ自由が保証されるようになったことも大きいだろう。
「次世代の井上尚弥」とは?
そんなわけで今では毎月のように元アマ王者たちの試合を観ることができる。6月13日には“長谷川穂積の後継者”と期待の村田昴や中野幹士(ともに帝拳ジム)らエリート・アマが比国選手と対戦し、TKO、KO勝ちを収めた。
ただ、翌日14日にはプロ2戦目に臨んだ三迫ジムの馬場龍成が、叩き上げのプロ、苗村修悟の強打につかまり、まさかの3回TKO負け。「非力でも勝てることを証明したい」と言っていたが、プロの変則スタイルに馴れないとこのような番狂わせが起きる。
いま注目されているのは、7月13日に井岡一翔の世界王座防衛戦の前座でデビューする超新星・堤駿斗(22歳)だ。2016年の世界ユース選手権で日本選手として初の優勝も経験し、「次世代の井上尚弥」との期待もかかる。東京五輪ではコロナ禍の影響で世界最終予選が中止となり、五輪代表の座をつかめず、パリ五輪を待たずにプロ転向に踏み切った。プロ初戦がいきなり8回戦で比国王者との対戦なのも異例である。
カンがよくどの距離でも戦える万能型。倒しにくいアマのグローブでもRSC勝ちが多かったようにパワーもありそうだ。3歳下の弟麗斗も習志野高―東洋大と駿斗の後を追う。プロ入り前から井岡と同じマネージメント会社と契約したのは、ボクシングでは堤兄弟が初めてではないか。それほど期待されているということである。