「まったく記憶がない」フェンス激突で倒れ込んだ…明豊のレフト“決死のキャッチ”を語る【センバツ好プレー】

　球場が静まり返った。

　6回裏、智弁学園は、3−5と2点差に迫り、なおも2アウト一、三塁のチャンス。4番・山下陽輔のレフトへの当たりは、あわやホームランかと思えるよう大飛球だった。

　定位置よりやや前に守っていた明豊のレフト・阿南心雄（しゆう）が一目散に後ろへ駆け出した。

「前進守備で、ゴロが来たら刺すというつもりで守っていたので、一瞬、わっと思って、全力で後ろに走りました。最初、左の方（センター寄り）に来たんですけど、風（に流されたの）で、右に反転しました」

　阿南は左腕にはめたグラブを後方に伸ばしながら、フェンス際でジャンプ。頭からフェンスに突っ込み、そのままうつ伏せになり倒れ込んだ。

　捕ったのか、落としたのか――。

　球場全体が息を呑む。

　阿南は顔を芝に埋めたまま、ぴくりともしない。

　塁審が阿南の元に走り寄る。寄っても、寄っても、まだ、わからない。

6回裏智弁学園2死一、三塁の場面。4番・山下陽輔のフライをレフト阿南心雄が決死のキャッチ。この直後フェンスに激突する　©KYODO

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「そのあとは覚えてない」

　阿南が記憶の糸を手繰り寄せる。

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