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【センバツ】なぜ“21世紀枠対決”で「8-3」の差がついた? 初勝利の具志川商監督「あらゆる手段を使わないといけない」
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byKYODO
posted2021/03/22 17:02
2回表八戸西二死二塁。具志川商のセンター・大城の好返球でタッチアウト、先制点を防いだ。具志川商は初出場初勝利となる
ともに将来性が豊かな大黒柱の本格派投手を擁して、攻守ともにチームの総合力で相手を倒していく。全国に名が知られているスラッガーはいないが、しっかりつないで得点をあげていくというスタイルからは力の差は感じなかった。
しかし終わってみれば8-3。これだけの差が生まれた背景にあったのは、そうした走塁を基準とした表裏一体のチームづくりにほかならない。
喜舎場監督は昨秋の九州大会の敗戦が今大会の勝利につながっているとも言っている。あと一つ勝てば選抜出場が確実視される準々決勝の福岡大大濠戦で完封負け(0-3)。この悔しさを糧にして、個々が能力を高め、さらに好投手を攻略するための手段を得ていったのだった。
「九州大会や全国大会で対戦する好投手に力対力では対抗できないですから、何で対抗できるかといったら、あらゆる手段を使わないといけない。走塁、チームワーク、束になって挑まないと勝てないと言ってきました。それをひとりひとりが意識した結果です。今年は足の速い選手が揃っているので、特徴を生かす試合ができた」
八戸西のエース・福島蓮は本調子とはいえなかったものの、プロ注目の評判の通り、素質の高いところを見せるピッチャーだった。改めてこの試合を思い返しても、それほど大きな差はなかった。
高校野球の試合は一瞬のプレーで状況が一変する。勝負のアヤを観たゲームだった。
2回の好返球を見せた大城が胸を張っていう。
「常にチャレンジャー精神を持って、積極的にプレーしようと心がけています。次の塁を狙う。積極的にバットを振る、守備でも攻めてプレーをする。自分たちが前に出て攻めないと勝てない。攻めきれたのが勝因だと思います」
紙一重のプレーから勝利を手繰り寄せた。具志川商、会心の1勝だった。