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女子陸上選手はなぜ“セパレート型”ユニフォームを着る? 努力を踏みにじる「性的画像撮影」の卑劣さ
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAsami Enomoto
posted2021/01/29 06:01
昨年の日本選手権、女子100mHで優勝した青木益未(中央)、2着の寺田明日香(左)、3着の藤森菜那
セパレート型のユニフォームが生まれた理由
もっとも大きいのは、空気抵抗を抑えられるという点だ。身体の構造上胸が出ているため、ランニングシャツでは胸の下の部分の空気抵抗が大きくなってしまう。それを抑えるための形状として、セパレートの形が生まれた。
さらに動きやすいという点もある。ランニングシャツとランニングパンツだと、シャツの無駄な動きが気になる、と選手が語っていたことがある。
また一説には、セパレートタイプを着用して走ると100mのタイムを0.1秒縮めることができる、とも言われている。
それが本当ならば、0.01秒を縮めるだけでも大変な努力を要するのだから着用するメリットは大きい。
いずれにせよ、いかに速いタイムを出せるかを追求した結果としてセパレートタイプのユニフォームの選択に至っている。
先に記したように、海外のトップクラスの中にこれを着る選手が出てきて、日本の上位選手にも出てきた。「速い選手が着て」いれば、真似したくなるものだ。これは学生の間に普及し、定着していった理由の1つである。
長距離種目や男性選手のユニフォーム選びは
一方、長距離種目などではセパレートタイプを着用する選手は見受けられない。
セパレートタイプのユニフォームは圧迫があるため、短距離系に対する効果はあるが、競技時間の長い長距離に関しては血流の面などデメリットが生じてくることによる。競技面でのパフォーマンス向上を追求しての選択、という点では共通する。
より記録を向上させたいと願うのは、男性アスリートも女性アスリートも変わりはない。だから男性アスリートのユニフォームも進化してきた。
ランニングシャツとランニングパンツがメインであった時代のあと、ランニングパンツにかわって、タイツのタイプが出てきた。そのうち、レスリングのような上下が一体となっていて密着度の高いユニフォームを着用する選手も現れたが、今日ではシャツとタイツというパターンが多いだろう。
女性、男性を問わず、ユニフォームは変遷を遂げてきたわけである。